米最高裁が29日(米国時間)、オンラインポルノ規制について、国民の言論の自由を侵害するとの考えを示唆した。しかし、同規制を憲法違反として廃止する判断を下すまでには至らなかった。オンラインポルノを規制するために制定された連邦法については、米最高裁で意見が二分していた。
米最高裁は、裁判で最終的な決断が下るまでは検察官が児童オンライン保護法(Child Online Protection Act:COPA)に基づいて刑事訴訟を起こさないよう求める、これまでの差し止め命令を支持する裁定を5対4で決定した。COPAは、「未成年者にとって有害」と思われる露骨な性描写を含む商用サイトを規制しており、違反者には民事制裁金や懲役刑が科される。
最高裁はこの決定にあたり、次のフィラデルフィアでの裁判では、ポルノのフィルタリングアプリケーションに関する「技術的な現状」に関する考察が認められるだろうと述べた。これは、COPAの最終的な運命についての問題解決がさらに2〜3年先送りされ、この規制の支持者たちが再び法廷に向かうことを意味する。
ブッシュ政権は、同法を支持し続けることを表明した。
「米議会は、この規制の必要性を繰り返し訴えてきた。そして法廷は、米国の子供たちを守るためのこういった常識的な対策に今回も反対している」と米司法省は声明の中で述べた。「司法省は、ネット上の暗い影に潜む危険な侵略者から子供たちを守るために動き続ける予定だ」(司法省)
米議会は、反ポルノ団体の圧力に応えて、1998年にCOPAを成立させた。しかし、すぐにアメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)が訴訟を起こしたため、同法に基づく訴追が起きたことは一度もない。
これまで米政府がオンラインポルノを規制してこなかったことは、インターネット上でのアダルト産業の繁栄を許す結果となった。Reuters Business Insightが2003年2月に発表した試算によると、2001年のオンラインコンテンツの総売上の3分の2は性関連業界によるもので、以来同業界は25億ドル規模にまで成長したという。
COPAについては、まるで卓球のラリーのように下級裁判所と最高裁との間で繰り返しやり取りされるという異例の訴訟手続きが行なわれてきた。フィラデルフィアの連邦判事は1999年2月に同法を無効とする判決を下し、第3巡回控訴裁判所もこの判決を支持した。しかし最高裁は2002年5月、控訴裁判所に対し、もっと分析を行うように要求した。その結果、控訴裁判所は2回にわたって同法は言論の自由を保障した米国合衆国憲法修正第1条に反すると述べている。
Anthony Kennedy判事によって書かれた29日の判決には、海外に及ばない刑法を制定するよりも、フィルタリングソフトウェアを使う方が、子供たちに不適切なサイトを見られないようにするうえで効果的であるという考えが、多数派意見として記載されている。「フィルタリングソフトウェアを使えば、未成年者が、米国内からウェブにアップロードされたポルノだけでなく、全てのポルノを見るのを防ぐことができる」とKennedyは記している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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