オープンソースソフト開発者がフリーソフトウェアとして公開していたHDDレコーダー用ソフトが、ある家電店で“自社開発”のソフトウェアとしてHDDレコーダーとともに販売されたことが、インターネット上で話題になっている。
“自社開発”と偽ってバンドル販売されたのは、NEC製HDDレコーダー「AX-10」上で動作するサーバソフト「wizd on NEC AX home AV server」。これは、Linux上に置いてあるムービーファイルをVertex Linkが販売しているホームネットワーク型マルチメディアプレーヤ「MediaWiz」で再生するためのサーバソフト「wizd」を、NEC製HDDレコーダー「AX-10」用に改造したもの。
家電店では、改造版wizdを作者に無断でバンドル販売し、ユーザーサポート先として作者の連絡先を記載していた。このため、作者に対して「操作法がわからない」「返金せよ」という苦情メールが殺到した。
今回問題になった点はいくつか挙げられる。まず第1に、オープンソースソフトを家電店が勝手に“自社開発”として販売したこと。この際、もともと付属していたドキュメント類は削除されていた。第2に、改造ソフトをAX-10にインストールすることでメーカーからの製品サポートを受けられなくなることを顧客に一切説明しなかったこと。そして第3に、製品のサポート先として改造ソフトの作者のメールアドレスのみを記載し、サポートを作者に丸投げしていたことが挙げられる。作者は、殺到する苦情メールのおかげで通常の開発作業ができず、また精神的な苦痛を強いられている。
家電店がライセンスや操作方法などを記したドキュメントを一切削除したことが、問題を大きくしている。オリジナルのwizdのライセンスは「複写、移植、改変、転載、再配布、すべて許諾します。用途を問わず、好きにしてもらってかまいません」と極めて曖昧になっている。しかしながら、オリジナル版にAX-10用の付加機能を追加した改造版wizdのライセンスには、「このパッケージはwizd以外のライセンスが含まれており無断での再配布また他サイトでの二次配布および商用利用等の利用は行うことができません」としっかり記されている。
また、ドキュメントの中には「このソフトウェアはNECの公式アップデートではありません、インストールした場合NECの保証を受けられなくなる可能性があります。 利用者の自己責任でのご利用をお願いしております」との一文もあり、家電店がドキュメントを削除したことで、ユーザーに混乱が生じている。
さらに、サポート用問い合わせ先として、作者のhotmailメールアドレスのみを記載し、URLや配布サイト名などは伏せられていた。作者によると、「非常に険悪なメールが多数(1日に30〜40通)無視すれば無視をするほど同じ内容を何十通と送られてくる」という。作者のメールサーバをパンクさせるほどのメールが殺到しており、通常のメールが埋もれてしまったりエラーではじかれてしまったりしているという。
作者はこの家電店に対して事実確認の電話を行ったが、家電店と本部をたらいまわしにされたという。以後、メールによる事実確認を行ったが、「そんな事実はない」「アルバイトが勝手に企画したことなのでわからない」といった返答が戻ってきた。それどころか、「これで有名になったんだから良かったと思ったほうがいい」「ユーザーサポートの費用払ってやってもいい」「その代わりソフトの権利はウチの会社でもらう」「所詮タダで配っているソフトだから誰の著作権も何もない」などといった的外れな返答まで来る始末だ。
作者は、改造ソフト販売の停止、店頭での謝罪分の掲示、購入者へ5000円の返金(作者によれば、バンドル販売以外にもソフト単体を5000円で販売していたという)を求めている。現在、家電店側の対応を待っている状態だ。
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