3月23日、NTTマーケティングアクトが運営するビジネス特化型のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「キャらリア」のサイトオープンを記念し、東京都の丸ビルホールにて「ネット時代のキャリアと人脈を考える」と題したシンポジウムが開催された。基調講演には、数々の企業で人事部長を務め、キャリア形成に関する多くの著書を持つ梅森浩一氏が登場し、人脈作りを考える上で重要な事柄を解説。また、パネルディスカッションでは、今、最も注目を集めている企業経営者らが集まり、転職や起業、人脈の築き方について熱く語った。
基調講演に先立ち、主催のNTTマーケティングアクトITビジネス部新規開発担当課長である谷本徹氏の挨拶があり、「人と人が繋がりあい出会うことによって新しい試みを提案していく」というコンセプトが説明された。続く基調講演で登場した梅森氏は、これまでの豊富な経験に基づくネット時代にマッチした人脈構築術について語った。
従来の人脈作りの方法は、異業種交流会などを利用して何百枚と名刺をばら撒くものだったが、ネットの普及により大きな変化を遂げた。その中でSNSは大きな存在感を持っている。日本最大手のSNSである「mixi」では会員数300万人を超えるなど、SNSを介すれば自宅にいながらにしてネットを利用したバーチャルな出会いが可能となった。しかし、バーチャルからリアルへの付き合いへと繋げていくことで、初めて人脈は築かれる。梅森氏は、その大切さを次のように説いた。
「問題は、バーチャルで発掘した人材をどうリアルに繋げていくかです。SNSを活用する際、注意すべきことは、常に他人に見られているということです。紙ベースよりもネットベースの方が、意外と自分の素をさらけ出してしまうもの。他人に見られているとわかった上で行動する必要があります」(梅森氏)
他人目線の重要性を語りながら、「ビジネスの基本原則は、他人が評価して何ぼ」と、梅森氏はさらに話を続けた。年功序列から実力主義に評価制度を変えた会社が増え、社長であっても株式市場から評価を受ける時代だ。ましてやそこで働く社員は必ず誰かから評価されている。自分はこれだけがんばっているのに、なぜ周りに認められないのか?という疑問を抱くケースは多い。
梅森氏は「長く続く人脈は、相手が自分をどのように評価するかによって決まります。大切なのは、自分が何を持っていて何を提供できるのかをアピールすること。人間関係の基本は、ギブアンドテイク。利害関係の一致が人脈構築にとって一番大切なことなのです」と説明する。つまりは、自分はがんばっているとアピールしていても、他人にとって利益が得られないものは評価につながらないという訳である。
ほかにも梅森氏は、現在自分が持っている人脈を見極めるために、人脈を金・銀・銅の3つに分けてみることを勧めた。「金・銀・銅に分けて、さらに消費期限を決めていきます。良い関係が成立しても、1年後には『金』でいられるのかはわかりません。また、自分が相手を金だと思っていても、相手にとって自分が『金』とは限りません。知人をそのように分けるのに抵抗を持つ人もいるかもしれませんが、人間関係、人脈ネットワークもメンテナンスが必要なのです」(梅森氏)
こうして人脈を整理し、バーチャルだけでなく、実際に会うというリアルな関係に落とし込むことで確実なものにしていくというのが狙いだ。また、梅森氏は、金・銀・銅の他に、SNSなどバーチャルの人脈、リアルな人脈、イマジナリーな人脈があることを紹介した。
「友人、知人と話をしていて、○○さんの話をすると、『その人知ってる』といわれることがあります。これはクセモノです。名前を知っている、何でもやってくれる関係。どちらもある。人間関係を作る上で、知ってるだけでは成り立ちません」と梅森氏は語り、無限大に「金」の人脈があるとひけらかす人に注意するように呼びかけた。
講演の最後には、面接、採用したいと言わせるコツが語られた。重要なポイントは「同じ匂いをしている人間か」「ポップコーンをする技術」の2点。同じ匂いとは、社風が向いていて会社の雰囲気に合っているかどうか。面接で企業が現場の人を出すのは、自分と同じ匂い、つまり同じ思いを持つ人、同じタイプの人をみつけるためだという。
そして「ポップコーン」とは、自分を膨らますこと。水増しするのではなく、相手の関心のあるところをつかんで喋ることを指している。相手の関心を引くには自分も同じ関心を持っていることを伝えること。話しすぎる人間は損をするというのが面接の要諦。嘘、誤魔化しはすぐに伝わる。「姑息な手段は使わない。それが人脈作りに一番大切なこと。王道を歩んでほしい」という言葉で、梅森氏の講演は締めくくられた。
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