大学、図書館、ハイテク企業で構成されるグループが連邦裁判所に対し、米連邦通信委員会(FCC)が策定した通信傍受規定の発効差し止めを求めている。同規定は、警察によるインターネットの監視を容易にすることを目的としており、米国内で論議を呼んでいる。
同グループは26日、ワシントンDCの控訴裁判所に71ページに及ぶ訴訟事件摘要書を提出した。その中で、同グループは裁判所に対し、FCCの通信傍受規定を無効とする判決を下すよう求めた。同規定は、「全てのブロードバンドインターネットアクセスサービス」および、多数のインターネット電話サービスを適用対象としている。
Bush政権は、FCCが2005年に策定した通信傍受規定について、仮に同規定がなければ発見を免れるであろう「犯罪者、テロリスト、スパイ」をより容易に逮捕する上で必要だ、と主張している。
しかし、今回提訴した企業や組織のグループは、米議会には、ブロードバンドプロバイダ(および、企業や大学のプライベートネットワーク)に、警察にとって(捜査を行う上で)便利な中央監視ハブの設置を義務付けるつもりは全くなかったと、主張している。今回、原告となっている企業/組織のリストには、Sun Microsystems、Pulver.com、米コミュニティカレッジ協会(American Association of Community Colleges:AACC)、全米大学協会(Association of American Universities:AAU)、米国図書館協会(American Library Association:ALA)などの名前が並んでいる。
シアトルに拠点を置くPerkins Coie法律事務所のパートナーで、同摘要書の共同執筆者であるAlbert Gidariは、「(同摘要書は)FCCの論法に欠陥があることを指摘し、同委員会の法的分析には妥当性がある、との説に信憑性がないことを明らかにしている」と語った。
2007年春に発効予定のFCCの通信傍受規定が仮に存在しなくても、警察にはインターネット上で通信傍受を行う法的権限がある。FBIのCarnivoreシステムはまさにその目的で開発されたものだ。しかし、「今日、国家安全保障上の脅威が高まっていること、さらに、犯罪者らが極めて秘密性の高い通信手段を用いる傾向が強まっていることを考えると、ブロードバンド上の通信を傍受できる標準化された権限が早急に必要だ」とFBIは主張する。
大半の訴訟はまず一人の判事が審理するが、今回は直接控訴裁判所に摘要書を送付するという異例の手続きが取られた。米国時間1月26日の提訴は事前に予想されていた。というのも、大学は団体で構成される原告グループが、2005年10月24日に控訴申立書を提出していたからだ。今後は、司法省とFCCが回答書を裁判所に提出することになる。
今回の訴訟の争点は、1994年に制定された法執行のための通信援助法(Communications Assistance for Law Enforcement Act:CALEA)の適用範囲だ。同法は電話会社に対し、プッシュボタン式電話で電話を掛ける際に押された番号を特定するなどの各種機能、電話会議の情報などを警察が確実に利用/入手できるよう、(納税者の負担で)ネットワークやスイッチを再構築することを義務付けている。
FBIの要求に反対する人々の主張によると、米議会はCALEAがインターネットには適用されないと明言したという。下院のある委員会が1994年10月に作成した報告書には、「(CALEAに規定された要求事項は)電子メールサービスなどの情報サービス、CompuServe、Prodigy、America Online、Mead Dataなどのオンラインサービス、インターネットサービスプロバイダ(ISP)には適用されない」との記述がある。
今回の訴訟の原告は26日に提出した摘要書の中で、「(Bush政権は)CALEAの本来の趣旨に反する勝手気ままな解釈に依存している。そうしなければ、違法行為となるからだ」と主張している。
しかし意外なことに、通信傍受規定を満場一致で可決したFCCの委員の一部は、同規定の法的根拠があいまいだったことを認めている。例えば、委員の一人であるKathleen Abernathyは、「このような手法は法的リスクがないわけではない」との懸念を示した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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