NBAの「Web 2.0」な英断--全映像をアーカイブ化、ファンに「解放」へ

Daniel Terdiman(CNET News.com)2005年12月12日 11時04分

 カリフォルニア州マウンテンビュー発--Chicago BullsのMichael Jordanが1989年シーズンのプレイオフで決めた忘れられないシュートのビデオを一目見ることができたら・・・と考える熱心なバスケットボールファンに、NBA(National Basketball Association)がもうすぐ助けの手をさしのべてくれるかもしれない。

 NBAは、Silicon Graphicsと協力しながら、Boston CelticsとLos Angeles Lakersが繰り広げた歴史に残る試合の数々から、優勝戦線から離脱したチーム同士の戦う一見意味のない消化試合まで、現存するすべての試合を記録した映像を集めたデジタルアーカイブの作成に乗り出す。このアーカイブは、NBA.comで公開される予定だ。NBAは米国時間8日夜に、当地にあるSGIのオフィスでこのプロジェクトを発表した。

 このプロジェクトは完成までに最長で6年かかる可能性があるが、これが予定通りに進めばファンはほぼすべての得点シーンを収めた映像を観られるようになるほか、これらのシーンを自分で編集してオリジナルのハイライト集をつくることも可能になる。

 NBA EntertainmentのStephen Hellmuth(業務/技術担当シニアバイスプレジデント)は、「われわれはビデオアーカイブを公開し、ファンが自分でハイライトビデオを編集したり、それをNBA.comで公開できるようにするしたいと考えている」と語った。

 このプロジェクトでは、新しく記録された映像をすべて高度なデジタルストレージシステムに収めるだけでなく、撮影されたまま劣化の一途をたどるフィルムやビデオなど、約60年間にわたって蓄積してきたアナログ映像をすべてデジタルメディアに変換するという骨の折れる作業にも取り組むことになる。同プロジェクトの狙いは、NBAの歴史をとらえたすべての映像を、各チームの監督からファンタジーリーグのファンまで、すべての人間が利用できるようにすることにある。

 NBAは、すべての作業が完了するまで待つようなことはせず、早ければ来年から徐々にプロジェクトの成果を発表していく可能性もある。ただし、課金の方法などについてはまだ明確になっていない。Hellmuthによると、NBAではファンにオリジナルのハイライト映像をNBA.comにアップロードしてもらい、最優秀映像賞を競い合うコンテストへの参加費を徴収する可能性もあるという。同氏はまた、有料でアーカイブを開放し、ファンが自分の編集したコンテンツをDVDに保存できるようにすることも可能だと述べた。

 Hellmuthは、NBAの技術面における進路に対し、MLB(Major League Baseball)やNFL(National Football League)も高い関心を示すとの考えを示した。

 「これはプロスポーツのどのリーグにも必要な移行だ。われわれはその中心におり、最初にこれを実現していく」(Hellmuth)

 SGIのGreg Estes(グローバルマーケティング担当バイスプレジデント)によると、NBAはSGIのストレージシステムやコンピュータ、ソフトウェアを使ったシステムを活用することになるという。

 「彼らは難問を解決しなくてはならない。毎日、衛星経由で送られてくる30本もの映像を編集しアーカイブすることになるが、このためにはわれわれの技術が不可欠だ。われわれはNBAがその点を広めてくれることをたいへん嬉しく思う」(Estes)

 NBAは、相当数の人員を確保して新旧すべての映像をくまなくチェックさせ、映像にタイムスタンプを付加したり、各プレイのレビューを追加していくことを計画している。Hellmuthによると、NBAでは各プレイのシーンを収めた膨大なデータベースを構築し、これを検索可能にすることを狙いにしており、各プレイのシーンには関わった選手の名前やコート上での正確な位置、そのプレイの発生した時間帯や結果、そしてその評価などが付加されるという。

 さらに同氏は、このデータベースをだれにでも検索可能にし、たとえばGolden State Warriorのポイントガード、Baron Davisが残り時間2分以内に打ったすべての3ポイントシュートを探し出せるようにすると述べた。

 Hellmuthはまた、このデジタルアーカイブプロジェクトの作業の進め方について、「両端から攻める形」--つまり、新しい試合のデジタル化を行うと同時に、昔の映像も最も古いものから順番にデジタル化していくことも明かした。同氏によると、古い映像はテープが劣化する前に処理する必要があるため、このような進め方をすることになったという。

 このプロジェクトは必要とする人にあらゆる映像を提供することが目的だが、この巨大映像ライブラリから得られる収入の可能性にNBAが大きく期待していることも明らかだ。

 「私なら(殿堂入りを果たしたMilwaukee Bucksの)Oscar Robertsonが残り時間10秒を切ったところでファウルアウトした3つのシーンを見てみたい」とSGIのEstesは言う。「1人のファンとして、こういった形でファンにゲームを提供できることは実に素晴らしい。またビジネスの点から見れば、NBAはこのアーカイブから利益を得られるようになる」(Estes)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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