パケット定額制を他社に先駆けて導入し、着うたや着うたフル、ゲームといったブロードバンドコンテンツが順調に成長を遂げているKDDIのau。今後はどういったコンテンツに力を注いでいくのだろうか。モバイル関連の事業者が一堂に会した「MCF モバイル コンファレンス 2005 (mobidec 2005)」において、コンテンツ・メディア事業本部コンテンツ推進部長の竹之内剛氏が明らかにした。
竹之内氏はまず、auユーザーのコンテンツ利用動向を紹介した。着うたやゲームなどダウンロード型のコンテンツは10〜20代の若年層に利用が多く、高年齢層ほど実用・情報取得型のコンテンツ利用が中心となる傾向にあるという。例外はブログで、20代後半や30代の、比較的ダウンロード型コンテンツ利用率が低くなる年代に浸透しているとのことだ。
auで人気のコンテンツの1つが着うたフルだ。しかし、アップルコンピュータのiPodを筆頭に、コンパクトで大容量のポータブルオーディオプレイヤーに音楽データを保存して持ち歩くスタイルが1つの市場となるほど普及したにもかかわらず、着うたフルが人気を集める理由はどこにあるのだろうか。
竹之内氏は、「ユーザーの嗜好を意識したサービス展開」が支持を集めていると語る。たとえば、配信楽曲数は6万曲と多くはないが、最新のJポップが中心のため、ユーザーは「好きなアーティストの最新曲が揃っている」という印象を持つ。そして、「あの曲が聞きたい」と思いついた時、すぐその場所で楽曲をダウンロードできるという携帯電話ならではの利便性もユーザーに支持される大きな要因の1つとなっている。
もう1つ特徴的なサービスが携帯電話で小説や漫画などの電子書籍が読めるEZブックだ。PCやPDA、専用端末などでじわじわ成長してきた電子書籍ビジネスは、1995年のサービス開始から8年で10億円規模の市場に発展した。しかしEZブックは、この既存の電子書籍市場の成長率をはるかに凌ぐ勢いをみせている。2003年12月にサービスを開始し、2005年10月末に累計約600万ダウンロードを達成した。
利用者は10〜20代の若年層が中心で、出版業界の課題であった「紙離れ世代」へのアプローチに成功した。「この話をすると、若年層の紙離れが加速するのではないかと懸念する出版関係の方もいるかもしれない。しかし心配には及ばない。もともと10代は本を読まないのだから」(竹之内氏)。むしろ若年層に対して書籍に触れる場を積極的に提供することで、結果的には紙媒体にとどまらない、活字メディアの活性化に繋がるとアピールした。
EZアプリ(BREW)については、現在はゲームが約8割を占めるという。ユーザーのニーズに応じた速いアプリケーション開発が求められているが、開発難易度の高さなどをどうクリアしてゆくかが今後の課題のようだ。
現在KDDIが力を入れているのが、より魅力的なポータルサイトの構築だ。パケット定額制に加入し、パケット料金を気にすることなく暇つぶし的にサイトを散策するユーザーが増えていることから、こういったユーザーをいかに惹きつけ、ショッピングやオークションサイトに誘引してECビジネスを拡大させるかが重要となる。このために、PCで携帯電話向けサイトを検索できる「DUOGATE」というサイトをゲートウェイとして設け、ユーザーの利便性を高めている。
もう1つ、ECビジネスを含むコンテンツサイトへの導線としてKDDIが注目しているのが、テレビ、広告、ラジオといったマスメディアを利用した「メディアポータルビジネス」だ。例えば、あるユーザーがテレビ番組で見たタレントのファッションが気に入ったとする。番組からショッピングサイトに誘導できれば、ユーザーはそのサイトにアクセスして商品を購入する。ここに1つの市場が成立する。
竹ノ内氏は、放送による「トリガー(=レスポンス誘発力)」と通信による「アクション(=レスポンス受容力)」を、放送事業者、通信事業者双方にとっての新たな収益につなげていくことこそ「放送と通信の融合」であると話して講演を結んだ。
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