ソニーBMGが、コンピュータで再生すると「rootkit」と呼ばれるソフトウェアをインストールしてしまうコピー防止機能付きCDを発売したことから、不快で面倒なある問題が持ち上がっている。
同社は現在、すでに出回っている470万枚のCDを対象に、前代未聞とも言えるリコールや交換プログラムに乗り出しているが、これに関連して、ソニーBMGの失策はコンピュータ業界やエンターテイメント業界に向けられたある疑問を浮き彫りにしていると、業界の専門家らは述べている。その疑問とは「ユーザーのコンピュータをコントロールする権利はだれのものか」というものだ。
ソニーBMGのCDは、コンピュータのハードディスクの奥深くにrootkitプログラムをインストールしてコピー防止用ツールを見えなくした。同社の措置に批判的な人々は、これらのCDが許容できる一線を越えてしまったと述べている。だが、このような措置を講じたのは同社が初めてではない。ほかの多くのソフトウェアプログラムも、ユーザーのコンピュータのさまざまな面をコントロールしており、ユーザー側では何が起きているのかを十分に理解していないことも多い。
このrootkitを3週間前に最初に発見したソフトウェア開発者のMark Russinovichは、「消費者に対して、ほかの会社が(ソニーBMGと)同じようなことをしないという保証は一切ない」とブログに記している。「どの動作が、ユーザーが本当の開示を求めている動作なのだろうか。複雑な問題だとは思うが、対応が必要とされている」(Russinovich)
この問題はエンターテインメント業界のなかに根深く存在するものだ。とくに音楽や映画、ビデオゲームは、コンピュータを使えば完全なデジタルコピーを簡単に作り出せてしまう。だが、ますます多くの製品やサービスがネットに進出し、PCを利用する必要が高まると同時にそれを悪用することも簡単になっているなかで、他の業界でもこの問題に直面することが増えていくだろう。
MicrosoftのAndrew Moss(技術ポリシー担当シニアディレクター)は、「パーソナルコンピュータは、ユーザーのものだからこそパーソナルコンピュータと呼ばれている。したがって、コンピュータ上で動作するものは、どんなものでもユーザーがコントロールできるようにするべきだ」と言う。
こう聞くと、ことは至って簡単なように思えるが、しかし実際はそれほど簡単ではない。
消費者向けの平均的なPCは、インスタントメッセージのクライアントからメディアプレイヤー、そして紛らわしいDSLネットワーキング用ソフトウェアまで、無数のアプリケーションですぐにいっぱいになってしまう。これらのアプリケーションのなかには、下層レベルでコンピュータの機能を変更してしまうものも多く、たとえば自動更新機能が無効になってしまうなどの問題もよく起こる。さらに、技術面の事柄について具体的に書かれており、かつ理解可能なライセンス契約が、技術に明るくないユーザーに提供されることもほとんどない。
「問題は、コンピュータのなかに存在する数多くの要素に対して、ユーザーがどの程度のコントロールを期待できるのがリーズナブルかということだ」とオックスフォード大学でインターネット政府/規制について教えるJonathan Zittrain教授は述べている。「私が知る限り、消費者の資産所有権を尊重する優れた基準は、コンピュータの世界にはない」(Zittrain)
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