楽天とNTTドコモは10月11日、インターネットオークション事業に関して事業・資本提携することで合意したと発表した。ドコモの持つ携帯電話事業に関するノウハウを楽天のオークション事業に利用することで、業界首位であるヤフーの追撃を図る。
楽天がインターネットオークション事業の一部を分社化し、新会社となる「楽天オークション」を12月1日付けで設立する。楽天オークションは12月16日にドコモに対して第三者割当増資を実施するとともに、楽天がドコモに楽天オークションの株式の一部を譲渡する。ドコモの出資額は約42億円で、新会社の株式の40%を取得する。
新会社の資本金は12月16日の増資時点で16億5000万円。社員数は15名で、取締役は楽天から3名、ドコモから2名参加する。
握手を交わす両社の代表たち。新会社が増資して得た資金は主にシステムの構築に使われるという |
新会社は楽天が持つオークション事業のうち、個人または個人事業主が出品するオークションサービス「楽天フリマ」の事業を引き継ぐ。楽天市場の出店者が開催する楽天スーパーオークションについては、RMS(Rakuten Merchant Server)という楽天のシステムを利用することから、楽天との共同提供となる。
今回の提携について、NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏は「楽天とはずっと一緒に事業ができないかという話をしていたが、オークションは特にモバイルと親和性が高く、今年の夏頃から具体的な話になった。日本のEC業界で第1位の楽天と約4500万人のiモードユーザーを持つドコモが組むことで、PCとモバイルでシームレスに利用できるオークションサービスが展開できる」と自信を見せた。
また、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は「モバイル関連でどのような技術をどう使うかというノウハウをドコモは持っている。楽天のECに関するノウハウとドコモのモバイルに関するノウハウを合わせることでモバイルからの使いやすさを高め、モバイルオークションの事業を伸ばしていく」と意気込んだ。
今回の提携により、楽天はモバイルを中心にオークション事業を強化し、ヤフーに対抗する。楽天の2004年12月期におけるオークション事業の業績は売上高が5億5000万円、営業利益が8300万円となっている。これに対し、ヤフーの2005年3月期における同事業の売上高は273億3800万円、営業利益が177億9200万円となっており、楽天との差は圧倒的だ。なお、楽天とドコモは新会社の売上目標を明らかにはしていない。
一方、ドコモは携帯電話市場の飽和や通信料金の値下げ競争により収益が伸び悩む中、通信料金以外の収益源を確保する狙いがある。新会社に資本参加するのはドコモだけだが、新会社のオークションサービスはKDDIやボーダフォンなど、他の携帯電話事業者にも提供していく考えだ。
新会社はモバイル向けの新サービスを今後提供するとしているが、具体的な開始時期については「サーバの増強など、楽天のシステムを強化してから早急に開始する」(ドコモ執行役員プロダクト&サービス本部 マルティメディアサービス部長の夏野剛氏)と述べるにとどめ、内容についても明らかにしていない。また、決済手段についても「ユーザーが一番使いやすい形にする」(中村氏)とだけ述べ、ドコモが課金代行をするのかという点については明言を避けた。
オークションでは詐欺行為などの犯罪が問題となっている。ドコモの夏野氏も「ドコモが単独でオークション事業を始めなかった大きな理由の1つが犯罪対策の問題だ」と認める。10月11日にはドコモと楽天のほか、ヤフーなど16社がオンライン取引に関する業界団体「インターネット通販推進協議会(仮称)」を設立して第1回総会を開催しており、今後オンライン取引をめぐる課題などについて話しあう予定となっている。
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