産経新聞社は9月20日、インターネットによる新聞の配信事業「産経NetView」を10月1日より開始すると発表した。3D技術を提供するヤッパが開発を請け負い、配信システムのホスティングをAIIが担当する。
産経NetViewで配信するコンテンツは、産経新聞東京朝刊最終版をベースとし、テレビ番組欄や証券欄、全面広告などを省いた主要ページ約20ページで構成される。レイアウトや広告は、紙面に掲載されたものがそのままコピーされた状態で提供される。インターネットに向けた特別コンテンツとして、動画や音声コンテンツも用意する。新聞発行日の午前5時にコンテンツが更新され、過去コンテンツの閲覧やPCへのコンテンツの保存はできないが、当日のコンテンツを印刷することはできる。
産経新聞社 代表取締役社長 住田良能氏は、「ブロードバンドの普及やPCの性能向上などで、電子環境に変化が起こっている。産経新聞社としては、従来の新聞をそのまま届けることを重要視しつつ、新しい時代に合ったサービスを提供することも大切だと考えている」と述べ、新サービスの提供に至った背景を語った。
左から、エー・アイ・アイ 代表取締役社長 大塚博正氏、産経新聞社 代表取締役社長 住田良能氏、ヤッパ 代表取締役社長 伊藤正裕氏。3社の協力の下、「産経NetView」が提供される |
また同氏は、ターゲットとするユーザー層について、「新聞のコンテンツがPCに毎日届けられるので、高層マンションに住んでいて朝刊を下に取りに行くことが面倒だと感じている人や、新聞離れが進んでいる若いユーザーにアピールできるだろう。インターネットを通じて、新しいユーザー層に接触したい」と述べている。
産経新聞では、2001年に日本で初めての電子新聞となる「ニュースビュウ」を事業化し、月額1995円(税込み)で提供していたが、同サービスは専用ビューアーが必要だったほか、開始当初のブロードバンドの普及率も低かったため、ユーザー数が伸び悩み、2005年3月にサービスを休止した。新たに開始する産経NetViewは、マクロメディアのFlashプレーヤーのプラグインを利用するため、専用ビューアーを必要としない。また提供価格も、月額315円(税込み)と、ニュースビュウや産経新聞本紙に比べ、格安となっている。
産経新聞の本紙を1カ月購読した場合の料金は、東日本で朝刊のみ配布する場合で2950円(税込み)となっており、本紙の購読者への影響が気になるところだが、産経新聞社の住田氏は、「紙とインターネットのユーザー層は異なるため、特に影響はないと考えている。ニュースビュウを提供していた時も、紙は紙で見たいという人が大半で、紙からインターネットに移行するユーザーはほとんどいなかった」とし、現在の購読者への影響はないという見解を示した。
315円という料金設定については、社内でも安すぎるのではないかとの議論はあったというが、産経新聞社 デジタルメディア局長 小林静雄氏は、「インターネットのコンテンツは無料で提供されるものが多く、ユーザーも有料コンテンツに対して抵抗がある。そうした感覚の中でぎりぎり許される価格が315円ではないかという結論に達した」と説明した。
産経NetViewでは、広告などもそのまま掲載されるが、NetView専用の特別な広告枠は当面用意する予定はないという。ただし、「インターネットでは様々な広告の形が考えられるため、将来的には検討したい」(小林氏)としている。
広告収入は視野に入れていないため、同事業の収入源は購読料のみとなる。産経新聞社では、初年度に3万人の会員獲得を目指すとしているが、損益分岐点に達するには7万人の購読者は必要だとしている。
現時点で産経NetViewを提供するISPは、AIIのほか、@nifty、OCN、BIGLOBE、So-netの5社。産経新聞社では、今後も提携ISPを増やしていきたいとしている。携帯電話への配信については、「新聞のレイアウトをそのまま提供するため、携帯電話の画面では小さすぎて向かない」とし、あくまでもPCに向けたサービスであるとした。
産経NetViewのサンプル画面。上部のツールバーで画面の縮小・拡大やページ繰りができるほか、最新ニュースのヘッドラインへのリンクもある |
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