ウェブページのキャッシュで著作権違反?--カナダで法案審議へ

Elinor Mills(CNET News.com)2005年07月20日 20時33分

 現在、カナダの議会に提出されている法案が成立した場合、検索エンジンがウェブページをキャッシュする行為が違法となる可能性がある。同法案に対しては、根拠を欠く不当な提訴を可能にすると共に、一般人からの情報へのアクセスが妨げられる恐れがあるとの批判の声が上がっている。

 Bill C-60と呼ばれる問題の法案は、1996年に世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization:WIPO)で採択された条約の一部を施行することにより、カナダの著作権法を修正することを目的としている。このWIPOでの条約制定は、後に、米国でのデジタル・ミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act:DMCA)制定につながった。

 カナダでは議会の夏季休暇明けに、C-60法案の審議と最初の採決が行われる予定だ。同法案は、ファイル交換、コピー防止機器、インターネットサービスプロバイダ(ISP)の法的責任などの問題を扱っている。同法案が成立した場合、レコード会社や映画製作会社に有利になるような形で著作権法が厳格化される可能性がある。

 しかし、カナダの首都オタワに拠点を置くMacera & Jarzyna法律事務所に所属する著作権専門の弁護士、Howard Knopfによると、同法案に含まれる短い一節が、ウェブコンテンツをアーカイブやキャッシュに保存している検索エンジンやその他の企業にとって大きな悩みの種になる可能性があるという。

 「(法案の条文を)文字通り読むと、(コンテンツの)コピーを保存すること、つまりキャッシュすることは違法となるだろう」(Knopf)

 オタワ大学法学部教授のMichael GeistもKnopfの意見に同意した。

 ウェブ上でコンテンツを公開している誰もが訴訟を起こす可能性があり、インターネット上に掲示されているコンテンツをキャッシュしている誰もが訴えられる可能性があるとGeistは指摘する。同氏は、C-60法案が提出された際、同法案の危険性に関する論文を執筆した。「密かなたくらみのある何者か、あるいは競合他社が、この制度を利用してコンテンツの排除に乗り出す可能性がある」とGeistは語る。また同氏によると、この法案には、虚偽の著作権侵害の訴えを阻止するための対策が全く盛り込まれていないという。

 米国ではそのような著作権問題は依然として大きな話題となっている。同国では、検索エンジン各社が知らぬ間に、次々と提起される著作権侵害訴訟の標的にされていた。特に、検索エンジンがウェブ上で検索可能なコンテンツの種類を拡大した際に提訴されるケースが多い。

 検索大手のGoogleは、訴訟好きで何かと話題に上るChurch of Scientologyが著作権を侵害したと主張するウェブサイトへのリンクを削除した。また同社は最近、複数のユーザーがアップロードした著作権で保護されたビデオコンテンツの削除を余儀なくされ、さらに、図書館の蔵書をデジタル化する計画について批判を浴びた。オンライン書籍販売大手の米Amazon.comは最近、同社の画像データベース内に保存されている写真をめぐりアダルト雑誌出版社に提訴され、Googleも同じ会社から提訴された。

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