タワーレコードとHMVジャパンは6月8日、共同で記者会見を開催し、「著作権法の一部を改正する法律案」に関して声明を発表した。同法案は6月3日に衆議院本会議で可決、成立しており、2005年1月1日より施行される。
今回の改正案には、国内で販売されるCDと同じCDを海外から輸入して安く販売する行為(還流)を禁止する項目が盛り込まれている。この項目は邦楽CDの逆輸入盤を禁止しようという目的で作られたものだが、法律の適用次第では洋楽の並行輸入盤の販売ができなくなる。このため、タワーレコードとHMVは、安い還流CDを阻止することには賛成としながらも、洋楽CDに対してこの法律を適用しないよう、文化庁や日本レコード協会に求めていた。
呉越同舟で会見に臨んだタワーレコードの森脇明夫氏(中央左)とHMVジャパンのポール・デゼルスキー氏(中央右) |
会見に立ったHMVジャパン代表取締役社長のポール・デゼルスキー氏は「ライバル関係にあるタワーレコードとHMVがひとつの場所にいるのは珍しいことだ」としたうえで、「HMVは世界中で活動しているが、今まで政治的なことに関与することはなかった。しかし顧客の利益やビジネスへの影響を考え、活動に貢献することを決めた」と今回の共同声明の意図を説明する。
タワーレコード代表取締役社長の森脇明夫氏は、「洋楽輸入盤は対象外であることを文化庁や日本レコード協会に確認している」として、今後も並行輸入盤の販売を続けていくという。ただし法的な保証がないことから、「今後も(保証を求めて)引き続き活動を進めていく」(森脇氏)とした。
両社の共同声明は以下の通り。
一、「著作権法の一部を改正する法律案」の成立、施行によって、洋楽輸入盤CDの輸入規制が起こらないよう、今後も文化庁や日本レコード協会などの関連省庁・団体に対して働きかけを行い、その動きを厳しく注視していくこと
一、「著作権法の一部を改正する法律案」が邦楽の著作権者を守るという本来の目的に沿って運用され、政府および関係者が同法案の「欧米諸国からの洋楽の並行輸入等が阻害されるなど消費者の利益が侵害される事態が生じた場合には、適切な対策を講じる」等の付帯決議を遵守するよう働きかけていくこと
一、万一、洋楽輸入盤規制により消費者に不利益が生じるような可能性が発生した場合には、直ちに洋楽輸入盤の自由な流通を守るために必要な行動を取ること
会見では日本レコード協会 会長の依田巽氏のコメントも発表された。依田氏は「この『音楽レコードの還流防止措置』により欧米諸国で製造、販売されている洋楽レコードの日本への輸入が禁止されることはないことを改めてここに確認し、音楽ファンの皆様へのメッセージといたします」としている。アジアなど欧米以外のアーティストの輸入盤に関してはコメントされていないが、「並行輸入が禁止されることはないと思う」(デゼルスキー氏)という。今後は税関などで阻止されることのないよう、運用面での協議を進めていくとしている。
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