ソニー創業者の盛田昭夫氏の伝記には、携帯音楽プレイヤー--「ウォークマン」と呼んだほうが、世界中にいるソニーの顧客にはわかりやすいかもしれない--という概念を発明したのは同氏だとの記述がある。
ところが、同社がこのアイデアに関する特許を1977年に取得したドイツ人発明家に対し、数百万ユーロの支払いを行っていたことが明らかになった。
東京にあるソニー本社の確認を取ったドイツの週刊誌Der Spiegelによると、20年にわたって法廷闘争を繰り広げてきた59才のAndreas Pavelは、同社に対して起こした訴訟をすべて取り下げる代わりに、この対価の支払を受けることで和解したという。
1977年、当時イタリアに住んでいたPavelは、Stereobelt(文字通り「ベルトに装着するステレオ」)というポータブルステレオ機器に関する複数の特許を登録した。そして1979年、ソニーが有名なウォークマンを発売したが、同製品は最初の2年間で2億台以上を売り上げることになる。
Pavelは1980年に、ライセンス契約を結んで許容範囲内の利用料の支払を求める交渉をソニーと友好的に開始し、自分の特許権を行使しようとした。ソニーは1986年に利用料を払い込んだものの、デバイスを発明したとのPavelの主張を決して受け入れなかった。そこでPavelは、権利の確認のために1989年に英国の法廷で訴訟を起こした。
7年以上が経過した後に訴えは却下され、300万ユーロ(368万ドル)近い訴訟費用の支払いを命じられたPavelは破産寸前に追い込まれた。
だがPavelは、自身が特許を保有する他国での訴訟継続も辞さないことを表明した。そして2001年、ソニーは態度を変化させ、Pavelとの新たな交渉を開始することに応じ、このほどそれが和解に達した。
両者間の同意内容は機密だが、その内容を知る情報筋は、ソニーがPavelに対して数百万ユーロを支払うことに同意した、と話している。
自身の勝訴を誇りとするPavelは、今度はウォークマンの類似製品を製造するApple Computerなどにも接触する計画だと話している。白いボディーが鮮やかなAppleのiPodは、ある意味でウォークマンのデジタル版後継機だと言える。
また、Pavelには以前より資金も豊富にある。同氏は1989年に、ポケットオーディオプレーヤと携帯電話の機能を組み合わせた技術の特許を米国で申請している。Der Spiegelによると、この申請受理に関する判断は近日中に下されるという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」