電話番号を用いたインターネット上の通信サービス基盤となるENUM。このENUMの実証実験を行うとして、昨年9月にENUMトライアルジャパン(ETJP)が設立された。これまでの活動報告と今後の予定を発表すべく、同団体は5月12日に第1次報告会を開催した。
ETJPは現在合計43会員で構成されており、その内訳は通信事業者7会員、ISP 5会員、ベンダー14会員、ドメイン名関連事業者7会員、その他11会員となっている。ETJPの活動は、ENUMトライアル用DNSの運用、ENUMを用いる通信機器やソフトウェアの技術的検証、ENUMを用いる通信サービスの技術的検証、ENUMに関する情報の集積などだ。技術的検証結果等はETJPのサイト上や報告会にて公開し、サービス実現のための課題を追求していく。
ETJPでは、活動を3つのフェーズで進めるとしていた。第1フェーズでは最小構成のENUM DNSを構築し、ENUM上で通信アプリケーション動作の確認を行う。第2フェーズではENUM DNSの階層の構築と、ENUMを用いて連携する通信サービスの技術確認を、そして第3フェーズでは、利用者が実際にENUMを操作するなどして統合的なサービス連携の技術確認を行うといった具合だ。
これまでの動きとしては、昨年10月14日に登録システムやDNSの運用を開始、今年3月22日にはそれまで手動で行っていた実験用番号の登録を自動化するなど、機能の向上をはかった。現時点でトライアルを推進するために必要な登録システムやDNSなどのインフラ環境が概ね整ったため、第2フェーズの実験を行う基盤はほぼできあがっているという。実際、すでにENUMを用いた通信機器やソフトウェア単体としてのトライアルは行われ、成果も出はじめているという。
ETJP内には現在2つのワーキンググループが設置されている。昨年12月の第2回ETJP全体ミーティングにて設立されたPrivacy and Security Working Group(PandS-WG)と、今年1月の第3回ETJP全体ミーティングにて設立されたDNS Working Group(DNS-WG)だ。
PanS-WGは、ETJP実験の各フェーズにおけるデータの取り扱いについてポリシーを検討し、ガイドラインを作成することが主な活動目的だ。6月までにETJP内にてガイドラインとなる文書が公開される予定だという。
DNS-WGは、日本国内で展開しうるENUMのDNSモデルを定義し、要求仕様と評価基準を作成、現在のDNS実装を性能評価するためのワーキンググループ。DNSのセキュリティ拡張のDNSSECについても同ワーキンググループで扱うとしており、すでにDNSSEC対応レジストリシステムの提供を3月に実現している。4月にはモデルの定義および要求仕様の策定がほぼ合意に達し、5月中には評価基準の策定、6月にDNSSECについての中間報告およびテスト環境の構築、9月にDNSパフォーマンス評価とDNSSECについての報告を行う予定だという。
ENUMを推進するにあたっては、数多くの課題点も指摘されている。セキュリティや個人情報保護に関することや技術面の問題、一般ユーザーの認知度の低さ、ビジネス展開の見えにくさ、実用段階での運営体制をどうするかといったことなどだ。また、運用・登録管理ポリシーが未整備であることに加え、法制度が整っていないことも今後の課題のひとつといえる。
また同団体では今後、新サービスやアプリケーションの模索と開発、各ベンダー製品にENUM機能を追加すること、ENUMを利用したIP電話接続、IPv6でのENUM対応などを特に推進していきたいとしている。ほかにも技術面では、ENUM DNSの負荷検証、セキュリティ向上の提案、ENUM DNSセカンダリサーバの運用などを行いたいとしている。さらに他国ENUMトライアル組織との連携を深め、海外接続実験も推進する予定だという。
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