欧州の各市民権擁護団体は、議論を呼んでいる知的所有権(IP)法を変更させようと、土壇場での抵抗を試みている。現状のままでこの法律が成立すると、消費者や小規模企業を相手取った愚かな訴訟が次々と起こってしまうというのが彼らの主張だ。
3月8日(現地時間)、欧州議会の法務委員会を先月通過した「Intellectual Property Rights Enforcement Directive(知的財産権の行使に関する指令)」が議会で討論された。議会は同指令の投票日を3月9日と設定しており、これが欧州議会のメンバーが11日の大臣投票前に修正案を提出できる最後の機会となる。同指令が承認された場合、加盟国は2年以内に指令の規定を自国の法令に取り込むことになる。
この指令は、大きな問題となりつつある欧州内での組織化された著作権侵害や偽造を厳重に取り締まることを主な目的としたものだ。だが、批判者らは同指令の適用範囲が拡大されている点を指摘し、現状のままでは、単なる商用目的の著作権侵害だけでなく、意図しない行為や、商用意図ももたず影響もあまりない個人の行いも対象に含まれてしまうとしている。
さらには、英国の市民権団体Foundation for Information Policy Research(FIPR)によると、同法により、大企業が厳格な法的処置を用いて小規模な競合相手をおびやかすことが可能になるという。例えば、高度技術に関する特許侵害の場合、競合企業の社屋を襲い、証拠を奪い、銀行口座を凍結させることが可能となる。
FIPRをはじめとした市民および消費者の権利擁護団体は団結して、同指令に適切な限界を設定できるという修正案を提示し、議会のメンバーに指示を求めている。すでに100人以上の議会メンバーがこの修正案を支持すると約束している。
FIPRで連合担当ディレクターを務めるIan Brownは、EU市民と権利保有者の利益のためには、指令に限度を設定することは不可欠だという。Brownは声明のなかで「限度を設けなければ、この指令により小規模企業や消費者を相手取った訴訟が次々と起こることになる。そうなると、この分野での欧州法の評判が悪くなる」と述べている。
指令の範囲と刑罰を拡大するために戦ってきたBusiness Software Allianceの代表者は先頃、犯罪グループの活動を抑制するためには法執行機関の権限強化は不可欠だ述べている。Business Software Allianceは、西欧の企業が使っているソフトウェアの37%が違法コピーだという調査結果を引き合いに出している。また、英国における不正コピーの割合を25%から15%に引き下げることで、同国のGDPは185億ドル(100億ポンド)の増加が見込まれ、また46億ドルの税収と4万人の雇用を作り出せるというIDCの調査結果を引用した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス