米上院は25日(米国時間)、歴史的なスパム対策法案を可決した。米議会は過去6年以上にわたり、勝手に送り付けられる商業用電子メール(迷惑メール)を規制する連邦法の制定に取り組んできたが、いずれも失敗に終わっていた。
George W. Bush大統領は、12月に受け取り次第、このCAN-SPAM(Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketing Act:無承諾ポルノグラフィー・マーケティング攻撃規制法)法案に署名する意向を示した。
発声採決前の短いフロアディスカッションでは、CAN-SPAM法案について民主、共和両党の議員が一様に、米国中のパソコンの受信トレイがバイアグラの広告や一攫千金話のメールで埋め尽くされるのを防ぐ念願の折衷案だとして、これを称賛した。Ron Wyden上院議員(民主党、オレゴン州選出)は、「この法案が施行されれば、これまでは事実上一切お咎めなしだった大手スパム業者は、突然、刑事訴追、(米連邦取引委員会(FTC)の)告発、百万ドル単位の損害賠償訴訟のリスクを負うことになる」と語った。
またConrad Burns上院議員(共和党、モンタナ州選出)は、「電子メールマーケッターたちがCAN-SPAM法案に従わない場合には、大変厳しい罰則が課される・・・スパム発信者には200万ドルを上限に、メール1通ごとに罰金が課される」と述べた。
25日の採決はCAN-SPAM法案の第3版を正式に承認するものだ。今秋、同法案は両院の間で行ったり来たりした。まず10月に上院で同法案の第1版が可決され、22日に早朝に下院で第2版が可決された。そして今回の第3版が下院で再び可決されてはじめて、Bush大統領が同法案に署名することになる。この署名は12月の第2週に行われる見通しだという。
CAN-SPAM法案の3つのバージョンは全て似通っており、いずれも折衷案で、一部の反スパム団体が強く求めていたような広範な規制法ではない。同法案では、詐欺的な商用メールの送信者には刑事罰が課されるが、大量の広告メールを一方的に送りつける行為自体は禁止されない"オプトアウト"方式が採用されている。また同法案は、FTCに"Do-Not-Spam"リストの作成を認めてはいるが、強制はしていない
上院で可決されたCAN-SPAM法案の最新版の主な変更点は以下の4点。
CAN-SPAM法案はどのバージョンも、より厳格な州法の制定を事前に抑止するものだ。今年9月に特に厳格な規制法が成立したカリフォルニア州では、合法的なオンラインマーケッターでさえ、つまらない訴訟を起こされることを懸念している。しかしCAN-SPAM法案が最終的に可決されれば、カリフォルニア州法の核心部分の施行は不可能となる。
かつてはスパム対策法に反対していたが、1年前に態度を一転させたDirect Marketing Association(DMA)は、CAN-SPAM法案について「前向きな進展」と評価した。DMAの広報担当ディレクター、Louis Mastriaは、「(電子メールマーケティング市場も)少なくとも1つの国内市場である以上、同市場の国内基準の制定は必要不可欠だ。連邦基準以外のものを制定しても、第1に効果がなく、第2に電子メールマーケティング市場の活気を損なうことになる」と語った。
さらに、David Sorkin教授がまとめたSpam Lawsによると、現在少なくとも15州が、勝手に送り付ける商業用電子メールに"ADV:"あるいは同様のラベル表示を義務付けている。仮にCAN-SPAM法案が立法化されれば、これらの法は全て無効となり、それらの州のスパム発信者たちには、以後、ラベル表示義務はなくなる。
CAN-SPAM法案を批判しているのは反スパム団体だけではない。National Association of Attorneys General(NAAG)は、今月議会に送付した書簡の中で次のように警告している。「同法案は、抜け穴、例外が多すぎる上、証拠の要求水準も高すぎる。それゆえ最小限の消費者保護にしかなっておらず、法執行を効果的に行う上での大きな負担となる。我々は議会に対し、同法案を可決しないよう謹んで要求する。」
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」