米Primedia子会社のSprinksを買収したことで、米Googleは通常のウェブページに、文脈ベースの広告を配信するために同社が採用している手法を見直すことになるかもしれない。
Googleは米国時間24日に、オンライン広告ネットワークの米Sprinksを買収することで合意に達した。この買収により、同社は新たな顧客や広告配信業者を獲得する一方で、主要な競争相手を排除することになる。しかも、今回の買収によって、Googleは、アナリストなどから改善の必要が指摘されている同社の文脈ベースの広告システムとは大きく異なる形で、ウェブページにコンテンツターゲット広告を配信する手法を手にすることになる。
「今回の買収は、Googleが何かいま以上のものを必要としている、そのことを彼ら自身が理解していることの現れだ。そして、この買収により、Googleは競争で優位な立場に立つことになる」と、米Forrester ResearchアナリストのCharlene Liは述べている。
Googleの検索エンジンは、とても関連性の高い検索結果を提供することで熱心なファンを集めているが、この非常に人気の高い技術を活かすために、広告媒体として利用することがますます多くなっている。同社はAdWordsという商用の検索サービスを展開しているが、これは検索結果ページにスポンサー付きのリンクを表示する権利を、オークションの仕組みを使って販売するサービスで、米Yahoo子会社の米Overture Servicesと競合している。広告主はウェブサーファーが広告をクリックするたびに料金を支払うシステムになっている。
Sprinksが先駆者となった、いわゆるコンテンツターゲティング戦略は、サーチエンジン広告を一歩進めたもので、その内容や他の関連事項に基づいて、ウェブページに広告を配信するというものだ。検索技術を駆使して同社の15万社以上の広告主の要求に応えるために、Googleは今年始め、コンテンツターゲティング分野への進出を開始した。時を同じくして、ライバルのOverture Servicesもこの分野に参入している。
Googleのプログラムは、検索技術によって、ウェブページのコンテンツを2、3のキーワードに絞り込めることをうたい文句にしている。そして、こうしたキーワードを手がかりに、それとマッチする広告を該当するページに売るというものだ。
アナリストの話では、商用検索は今年20億ドルの市場規模があると見られているが、それが2007年には70億ドルにまで成長するという。同市場の一部であるコンテンツターゲット広告分野は、今年、数百万ドル市場になると予想される。
しかし、このシステムにはいくつかの落とし穴がある。
検索エンジンの微調整が必要
コンテンツターゲティングは、思いもかけない結果を表示することがある。最近報告されたなかでは、あるスーツケース会社の広告が、スーツケースを使用した陰惨な殺人事件を報道した、New York Postのニュースページに登場したという事例がある。また、ForresterのLiによれば、このシステムは広告主にとってもあまり効果がないという。同氏は、コンテンツターゲット広告の効果は、検索関連広告の5分の1程度しかないとみている。
同氏によると、これまでのところ、SprinksがGoogleを含むライバルに勝っていたという。Sprinksのシステムは、ページを機械的に判断する技術に頼るのではなく、エディタが作成したウェブページカテゴリに広告をマッチさせていることが、その理由だと同氏は説明した。たとえば、Sprinksの場合、広告主は自分の広告が健康関連ページとか、不動産ページといったカテゴリに表示されるように入札でき、これによって事前にどのようなページに表示されるかを予想できる。対照的に、Googleの広告主はコンテンツターゲティングプログラムをオンまたはオフにすることしかできない。つまり、一旦、広告主がプログラムに参加すると、特定のサイトでの成果に関係なく、広告はキーワードに関連するサイトであれば、ネットワークのどこにでも表示される可能性がある。
Googleがあくまでも自社の技術にこだわったとしても、今回の買収によって、ペイ・パー・クリック広告を専門とする30人の社員を受け入れることになり、これによって同社の顧客サービスが改善されるだろうと、業界ウォッチャーは述べている。Google関係者は、同社の顧客サービスに関する問題について直ちにコメントすることは避けた。
「Googleの顧客サービスが、Overtureに比べても、合格レベルに達していないことは誰もが知っている。責任のある相手とはいえない。広告主はこれまで以上にペイ・パー・クリック広告の評価方法に厳しくなっており、顧客が支援を必要とすることは確かだ」と、検索エンジン広告スペシャリストのJessie Stricchiolaは話している。
買収して、排除する?
確かに、GoogleがSprinksのコンテンツターゲティング手法に関して、壮大な計画を準備していると、誰もが思っているわけではない。この手法は、現在同社がとっている技術主導型のアプローチとあまりに違うからだ。
「Googleは、文脈を元にしてターゲッティングを行う世界のなかで、唯一の代替ビジネスモデルを排除するために、金を出しただけ」と、ニューヨークの調査会社米Jupiter Mediaのリサーチディレクター、Matthew Berkは語っている。
これは、過去にGoogleがとった戦略に似ている。今年始め、Googleは文脈ベースの広告技術を提供する米Applied Semanticsを買収したが、結果的に自社のソフトウェアを優先し、Applied Semanticsのソフトウェアを廃止するだけに終わった。しかし、この買収によって、Googleはいくらかの顧客を獲得すると同時に、ライバルを1社葬り去る結果となった。
「Googleにとって、大切なことは、多くの優秀な人材を確保し、筋のいい広告配信契約をいくつかまとめ、そしてもっとも近いところにいる競合企業を排除することだろう」と、業界ニューズレター「Search Engine Watch」の編集者であるDanny Sullivanはコメントしている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」