全米レコード協会(RIAA)は、不正なファイル交換を行っていたとして、先頃261人を相手取って訴訟を起こしたが、このうちの一件を取り下げた。人間違いの可能性が浮上したためだという。
同協会は24日(米国時間)、Sarah Wardというボストン在住の老婦人を相手取った訴訟を取り下げたことを認めた。この女性は、容疑をかけられているファイル交換行為には関与できるはずがないと主張している。また、この女性はMacintoshユーザーだが、彼女が使ったとされるファイル交換ソフトKazaaにはMac版がないと、この女性と話をした弁護士は語った。
これに対して、RIAAは、Wardが使用したISPのアカウントを割り出す際に間違いを犯したとは考えていないが、差し当たりこの訴訟を取り下げることにしたと、同協会の広報担当者は述べている。
「我々は可能な限り注意深くことを進めており、この件に関しては"疑わしきは罰せず"という道を選んだ。信頼に足る論証があれば、訴えを取り下げた上で、後に改めて質問を行う」(RIAA広報担当のAmy Weiss。)
Wardに対する訴訟は、RIAAを批判する者たちが声高に主張する懸念を浮き彫りにしている。批判者らは、RIAAがファイル交換ユーザー追求の過程で、そのうち無実のコンピュータユーザーを捕まえることになるだろうと、前々から予想していた。今回の事件がRIAAの法的取り組みにすぐさまダメージを与えることにはならないだろうが、しかしそれがRIAAの捜査手続きに対する信頼性に疑問を投げかけることになったと、複数の弁護士が述べている。
Wardに対する訴訟は2週間前に起こされたものだ。RIAAはこの時、「度を外れた」ファイル交換利用者と同協会が見なした、合わせて261人のコンピュータユーザーを相手取り、著作権侵害訴訟を起こした。だが、RIAAが描くファイル交換利用者のステレオタイプとはかけ離れたユーザーたちの話が、その後すぐに明らかになった。そのなかには、ニューヨークの低所得者向け公共住宅に暮らすBrianna Laharaっという名の12歳の少女や、テキサスで暮らす72歳になる老人のものも含まれていた。
Wardと話をした弁護士によると、彼女は夫と二人暮らしの彫刻家で、以前は児童教育の仕事に携わっていたという。彼女の子供や孫たちは、別の場所で暮らしており、PCでファイル交換を行うのに彼女のアカウントをつかったはずはないと、弁護士は説明している。
また、Electronic Frontier Foundationの弁護士で、Wardを弁護を引き受けたCindy Cohnによると、Wardが、自分のコンピュータのなかにあるとされるファイルの多くを、ネットからダウンロードしてきたとは考えにくいという。
「Wardと電話で一言話せば、彼女がファイル交換をするような人間ではないと誰でもわかるだろう。RIAAが果敢に進める撲滅運動とやらが、いかに見境のないものであるかが、これでよくわかった」(Cohn)この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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