もし現在の傾向が続くなら、電子メールは通信手段としてまったく役に立たないものになってしまうというほどに、スパムは非常にシビアな問題になっている。だが、対スパムへのいくつかの取り組み、例えばスパム送信者が使ったプロバイダのブラックリスト化といった手段自身が、逆に問題を引き起こしたりしてはいないだろうか?
5月1日(米国時間)、米連邦取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)主催で3日間にわたって開催されているスパム対策会議のFTC Spam Forumにて、参加者は「ブラックリスト化は合法か?」「それが新たな被害をもたらしてはいないだろうか?」を論点に争った。ある講演者は、ブラックリストの使用が、罪のない電子メールの消失や偶発的な事故による廃棄を引き起こすと警告する。
一方で、Mail Abuse Prevention SystemのMargie Arbonはブラックリストの使用を擁護する。「ブラックリストの作成や使用は、設備オーナー(ISPなど)が決定すること。彼らは、電子メールの洪水に埋もれようとしている自身の設備を守ろうとしているのだ」
しかし、Network Advertising Initiative(NAI)のEmail Service Provider Coalitionでディレクタを務めるJ. Trevor Hughesによれば、ブラックリストの使用に対して反論する。Hushesは、財務報告書や他の重要なメッセージ群がブラックリストによって事故かあるいは故意に失われたという。
FTCのこの会議は、米政府によって取り組みが行われている、ブラックリスト使用の可否をめぐる初の重要局面である。たった1人のスパム送信者のために、批判の的となる手段をISP全体に対して適用することになるのだ。
2003年2月には、MicrosoftのMSNサービスがライバルであるAOL Time WarnerのRoadRunner broadbandとEarthLinkから到着した電子メールを、誤ってブロックしてしまった事故があった。またCNET News.comが2002年11月に報告したように、FTC自身がスタッフへの電子メールをブロックするようなブラックリストを採用している。FTCのスタッフ弁護士であるBrian Husemanは、FTCがブラックリスト採用を検討していたことを報告した。
「ブラックリストの使用が違法だと見なされない間、無責任な検閲を繰り返すことになる」とElectronic Frontier Foundation(EFF)のディレクタのCindy Cohnは話す。彼女はまた、メーリングリストのサーバを運用する、一部パワーユーザーや非営利団体が増加するブラックリストの問題に直面していると指摘する。EFFがメーリングリストサーバ運営者からの不満の声を聞いており、ブラックリストに対するベストな手段を模索しつつあることを紹介した。
ブラックリストはスパム撃退に有効かもしれない、だが一方でISPらブラックリスト使用者らは秘密主義で不可解な行動をとる。どのISPがブラックリストを使っているかというFTCからの質問に対し、同リストを作成するSpamhausのAlan Murphyは回答を拒否した。
あるパネリストは、ブラックリストがビジネスを阻害するのなら、法律に抵触するのではと指摘したが、別のパネリストであるArent Fox法律事務所のMichael Growはそれに賛同しない。「もし妥当な調査を行ってスパムの源となるIPアドレスを特定できるのなら、米国憲法修正第1条に抵触しているといえるだろう」
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