Ford Motorは2年前の製品リコール騒動をきっかけに自社サイトで提供する検索機能の分析という、いばらの道を進みはじめた。
Fordが自社の自動車からFirestone製のタイヤを外すと表明したとき、消費者は単なる製品カタログ以上の情報を求めてFordのウェブサイトに殺到した。その後しばらくの間、Fordのウェブサイトでは1日に数千回以上検索機能が利用された。同社のウェブサイトの検索機能を担当するAsk Jeevesはサービスを改善するために検索キーワードを即座に記録し分析し続けた。そして、その取り組みは現在も続いている。
「Ask Jeevesの調査結果には2つの用途がある」とFordのコンシューマー・eマーケティングマネージャーのJoyce Muellerは言う。「まず、サイトのデザインを評価し、ウェブサイトの訪問者が見つけるのに苦労しているのはどのコンテンツなのかを理解する。次に、訪問者が何を求めているのかを理解する。現在、我々のサイトで検索されているのは主要製品である自動車に関する情報ではなく、SVT(Special Vehicles Team)のような自動車以外の情報が多い。こういった分析はサイトの拡張を考える際に優先順位を付けるのに役立っている」
消費者分析の分野では検索キーワードの分析が急速に注目を集めている。今では、検索キーワードの内容を精査することは企業が自社のウェブサイトの成果を評価し、より効果的で収益を生むものにするための方法として好まれている。検索キーワードの分析はクリックストリーム分析(訪問者がどこからどのページに移ったかを分析する方法)を除く、ほとんど全ての旧来の分析手法を駆逐してしまった。
Googleよりも役に立たない企業サイトの検索機能
専門家は企業ウェブサイトの検索キーワード分析が重要なツールであることに同意はするものの、検索機能そのものに限界があるのだからキーワード分析にも限界があると語る。
最近の調査によれば企業ウェブサイトの検索機能は概して訪問者が必要な情報を得るのに役立っていない。Jupiter Researchが2月に発表した調査によれば、企業ウェブの検索機能とポータルサイトなどの一般検索サービスの性能には大きな差がある。例えば、Googleとある企業のウェブサイトに備わっている検索機能を比較した場合、その企業のウェブにある情報を検索する場合でも、Googleの方が52%も見つけ出す時間が少なかったという。
Jupiter Researchは報告書の中で「自社のウェブサイトで検索機能を提供することは顧客の行動から学び、顧客の行動に影響を与える最高の機会だ」と述べている。ただし「ほとんどのウェブサイトの運営者は検索機能の効果を評価し最適化するための明確な評価軸を確立できていない。検索結果の良し悪しをアルゴリズム任せにする風潮と、評価手法や最適化に対する努力不足があいまって、ウェブサイトの運営者たちは自分たちの投資の価値を十分に理解していないし、訪問者に対しても十分な機能を提供できていない」と指摘している。
Jupiter Researchのこの調査は外部からの検索に関する調査だったが、IDCが行った別の調査では、企業のナレッジワーカー(知的労働者)が自社の情報に対して行う検索においてもやはり同様の問題が指摘されている。
IDCの調査によれば企業のナレッジワーカーは情報収集に1日の15%〜30%を費やす。しかし、彼らがオンライン上で行う検索の50%以上が探している情報に到達できていない。IDCの試算では1000人のナレッジワーカーを持つ企業は意味のない検索に時間を費やすことで、年間600万ドル以上を無駄にしているという。
検索分析をめぐるベンチャーと大手ベンダーの攻防
StratifyやiPhraseのような検索ソフトのベンチャー企業はこの問題をチャンスに変えようとしている。彼らは検索ソフトの大手ベンダーに、洗練されてユーザーフレンドリーな検索分析技術を武器に対抗しようとしている。しかし、チャンスはそう長くは続かないかもしれない。大手企業も自社製品に分析機能を追加しようと必死に取り組んでいるからだ。
企業向けの検索ソフト大手のVerityは自社の検索ソフトの中に組み込んだ分析ツールの機能が向上していると認識しており、今年中には今までの枠を越えた分析ツールを同社の2つの製品に追加するという。Verityが4カ月前にInktomiの企業向け検索エンジン部門を買収した際に統合されたInktomiの検索アプリケーションは、Verityの新しい分析機能に対応できる状況にある。
そして、分析ツールを武器にするベンチャー企業も自社の技術を強化しつつある。iPhraseは先週、自社の企業向け検索ツールをさらに強力な分析ソフトでアップデートした。
「分析機能は本当に重要だ。そして、大体において、大手の検索ソフトはこの機能に関してあまり上手く行っていない」とJupiterのアナリストMatthew Berkは言う。「分析機能は差別化の際の強力なポイントになる。ただし、他の多くの企業もすぐに追随するだろう」
Berkによれば検索機能の泥沼的状況を救うのは洗練された検索キーワードの分析であり、その分析のためのツールは検索ソフトと別に新たに追加されるのではなく、最初から組み込まれるべきなのだという。
「AutonomyやVerityのような大手の検索ソフトの問題は、何か特別な分析ツールを組み込まないと管理ができないということだ」とBerkは言う。「そして検索結果が正確で役に立つものかどうか注意を払い続けなければ、検索エンジンの導入は無駄な投資に終わってしまう」
一方で別のアナリストは統合検索(integrated search)と分析用の製品の組み合わせの方が、既存の検索ツールに分析機能を追加するよりも良いという。
「多くの従来型の検索ソフトベンダーは『うちも分析機能を提供している』と言うだろう。しかし、問題は彼らの提供するものを使って顧客がどれだけのことをしなくてはならないかということだ」とForrester ResearchのLaura Ramosは言う。「StratifyやInQuira、iPhraseのような比較的若い企業は分析機能により多くの注意を払っている。大手の検索ソフトにも分析の機能は付いているだろう。しかし、顧客はプロフェッショナルサービスや自分たちの手を使って分析から何か意味のあるものを見つけ出すという作業をしなくてはならないのだ」
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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