前回の湾岸戦争ではレポーターたちは電話回線を使って現地の様子を伝えるのが精一杯だった。しかし、今回の戦争では、新しいテクノロジーを駆使して、ニュースの現場からテレビ放送に耐えうるビデオ映像を送信してくるレポーターが増えそうだ。
このビデオ映像を可能にするのはスウェーデンのSwe-Dish Satellite Systemsが開発したIPT Suitcaseというブリーフケース大の衛星放送システムだ。このシステムの重量は35Kg弱。インターネットプロトコルを使って最大2Mbpsで通信することができる。
Swe-DishのマーケティングディレクターであるHampus Delinはいくつかの主要なテレビ放送ネットワークがIPT Suitcaseシステムをイラクで使うために購入したことを明らかにした。
「多国籍軍に従軍するジャーナリストにとって、IPT Suitcaseは最適な選択だ。また、放送ネットワークから見てもIPTはサイズが小さいので、通常よりも小規模なクルー編成でより多くの報道チームを配置し、多面的な報道を展開できる」と彼は言う。
Delinによれば、放送ネットワークは衛星電話の次の手段として、この手の小規模なテレビ放送システムの採用を既に決めており、たとえばNBCやその親会社のGEは自分たちで開発を進めているという。「ある意味ではこれは衛星電話みたいなものだ。テレビ放送とまったく同じクオリティの報道が、カメラマンとクルーの2人だけで、完全にコントロールできるように作られている」と彼は言う。
衛星電話はしばらくの間、主要な伝達手段として利用されるだろう。しかし、ビデオ圧縮技術を販売する英国のTVZは、自分たちが開発したLaptop News Gathering(LNG)システムを使って、衛星電話を完全なテレビ放送システムに変えようとしている。
LNGシステムの主要なコンポーネントはデジタルビデオを非常に小さなファイルに圧縮し衛星電話で送信できるようにするソフトウェアだ。ジャーナリストは自分のノートパソコンにビデオをダウンロードして、LNGソフトウェアで圧縮し、ノートパソコンを衛星電話とつないで圧縮したファイルを送信する。
LNGは3カ月前に発売された。TVZのディレクターKen Herronによると、最初の顧客にはBBCやABC Newsなどが名を連ねており、彼らはイラクでの報道用に30ライセンスを使用しているという。
「ジャーナリストが期待するように、技術革新のスピードはとても速い。TV特派員が求めているのはどこにいても最高品質のレポートができる軽量の装備だ」とHerronは言う。
一方で、戦争報道に対する膨大な期待にこたえるために、インターネットツールを使った実験的なニュース報道の試みが盛んに行われている。
BlogやRSSに集まる注目
今回の戦争によってBlog(ブログ)が受けた恩恵は大きい。文字情報中心のシンプルなBlogスタイルは書き手と読者をダイレクトに結ぶ。カリフォルニア大学バークレー校のジャーナリズム大学院でNew Media Programのディレクターを務めるPaul Grabowiczによれば、多くの主要なニュース配信機関はレポーターによるBlogを開始しており、更に多くの機関がイラク紛争に関する新しい知見を求める読者にBlogを提供することになりそうだ。GrabowiczはこれからBlogに参入する機関には思慮深くなることを求めている。
「まず、何をしようとしているのか、目的は何かを考えなくてはだめだ。読者をつなぎとめるために、Blogを使ってできることはたくさんある。しかし、それは大勢には関係のないどうしようもないゴミみたいなものかもしれない」とGrabowiczは言う。
戦争はRSS(Rich Site SummaryもしくはRDF Site Summary)にも恩恵をもたらすかもしれない。RSSはコンテンツを頻繁に更新するウェブサイトが読者に新しい情報を伝えるためのXMLだ。Grabowiczは、現時点でRSSのフィードを提供していないウェブサイトが戦争の間にRSS配信に乗り出すことはないだろうが、既にRSSフィードを提供しているサイトに対する注目が集まるだろうと言う。
「人々がどのようにして戦争に関する情報を集めるのか、今後さまざまな分析が行われるはずだ。もしRSSが役に立ったということになれば、ニュース機関にとってRSSの優先順位は高くなるだろう」と彼は語った。
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