米国の郵便ID化計画に、プライバシー擁護派から懸念の声

 米政府の委員会が、米国郵政公社(USPS)に対し、郵便物を追跡して送り主の身元を特定できる切手「スマートスタンプ」の開発を促す報告書を発表したことについて、プライバシー擁護派から懸念の声が上がっている。

 米国郵政公社に関する大統領諮問委員会が先月発表した報告書には、多額の負債を抱える同公社の改革を目的とした数多くの勧告が盛り込まれた。その中には、いわゆるインテリジェント・メール・システム開発の積極的推進も含まれている。

 同システムの詳細は未定だが、バーコードか特別な切手が使われ、少なくとも送り主、送り先、郵便の種類を特定できるようにする。USPSはすでに、企業顧客向けに郵便追跡サービスを提供している。この報告書は、国家安全保障上の目的から、このコンセプトの適用範囲を全ての郵便物に拡大することを提案するとともに、USPSに対し米国土安全保障省(DHS)と共同でシステム開発を進めるよう勧告している。

 同報告書によると、そのようなシステムは、郵政公社による更に詳細かつ正確な郵便追跡情報の提供を可能にするだけではないという。2001年に炭疽菌に汚染された手紙によって、5人が死亡し、十数人が感染する事件が発生したが、このシステムはそうした郵便に関連するテロ攻撃が発生した場合に捜査当局が使用し得る、新たな捜査用ツールとしても期待されている。なお、2001年の事件は未だ解決には至っていない。

 しかしプライバシー監視団体は、全ての郵便物について送り主の身元確認を義務付ければ、市民の自由に深刻なリスクを及ぼしかねないとの懸念を表明している。

 技術政策に関するNPO団体の米CDT(Center for Democracy and Technology)のアソシエイト・ディレクター、Ari Schwartzは「米国では匿名で政治的発言を行ってきた長い歴史がある」と述べた上で、「(改革によって公的なメールシステムから匿名性を奪えば)米国の政治的発言にも大きな変化が生じる」と語った。

 米EPIC(Electronic Privacy Information Center)の法律顧問代理を務めるChris Hoofnagleは、そのようなシステムは政府の監視能力の一層の強化につながる可能性があると指摘する。

 Hoofnagleによると、例えばすでにFBIは、犯罪容疑者の通信を監視するため、彼らが送付/受領した手紙や小包を未開封のまま表面だけ複写することが許されているという。Hoofnagleは、インテリジェント・メール・システムによって、そのような「郵便調査」活動がさらに容易になり、FBIにおいてより広範囲な人々の間の通信を追跡するためのデータベースが構築される可能性があると警告している。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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