最終更新時刻:2008年7月25日(金) 18時19分

HPに聞く、「アダプティブコンピューティングとは何か」

Charles Cooper

2003/12/04 10:14  

 コンピューティングの未来像について想像するのは簡単だ。しかし、その未来が見えているのは我が社だと顧客に納得させられるかは、また別の話だ。

  1990年代末にやりたい放題行ったIT投資のせいで、多くのITユーザーたちは頭を抱えている。「いけいけどんどん」の時代は終わった。今や現実は、新プロジェクトに何の異論もなく予算がとれた時代とは大きくかけ離れている。

 今年に入り、複数のコンピュータ企業が議論をシフトしようとしている。各社は技術のために技術を買う行為は時代遅れだと認めた。新たな宣伝文句は、企業がテクノロジーとビジネスニーズをうまく連携させられるように支援するというものだ。この問題を解決すれば、非常に高い投資対効果(ROI)が得られると彼らは言う。

 これは競合ビジョンの戦いだ。米IBMはオンデマンドコンピューティングについて語り、米SunはN1計画を提唱、米Hewlett-Packardはアダプティブコンピューティングを打ち出した。

 問題は、これらの包括的で戦略的なフレーズが様々な状況にあてはまり、幅広く理解される可能性があるうえ、非常に曖昧であることだ。実際、IBMの幹部は今年初め、同社の販売部隊がオンデマンドコンピューティングの想定するものを全く理解していない、ということをしぶしぶ認めた。

 CNET News.comは、HPのアダプティブエンタープライズ構想担当のシニアバイスプレジデントNora Denzelにインタビューを行い、コンピュータ大手企業の視点から見たIT業界全容について尋ねた。

---専門用語や宣伝文句を使わずに、アダプティブエンタープライズ構想とは何か、簡単に定義してもらえますか。

 アダプティブエンタープライズを、ビジネスに影響を与える変化にリアルタイムで対応したい、と考えている顧客企業のためのビジネス戦略と定義しています。

---それは全企業にあてはまるありきたりな表現に聞こえます。何が特別なのですか。

 HP秘伝のソースは、企業戦略の現れであるビジネスプロセスとITツールを結合させる能力です。この2つが同調すれば飛躍的な進歩が生まれます。ビジネス環境における変化が、ダイナミックにITを変化させる可能性があるのです。

---それは、ほかの有名企業に行っても手に入るのではないですか。Sun、IBMも同じ事を始めようとしています。私は何か見落としていますか。

 HPのアプローチは根本的に違います。顧客はアダプティブな状態になるために新たな技術をたくさん導入する必要はありません。あなたが.NetまたはJ2EEを選択していたと仮定しましょう。HPはどちらも提供していませんし、どちらかをもう一方と取り替えることで恩恵を受けるわけでもありません。OracleまたはDB2を選択していたとしても同じで、我々に利権はありません。それがHPとIBMの違いです。IBMはこう言っています。「1本の道があり、それ当社のサービスとソフトウェア群とハードウェア群を経由するものです」と。変更を検討している企業に対し、HPにはアドバイスができますが、私たちのアドバイスは(独占的な)技術などに基づいたものではありません。

---では、何に基づいてアドバイスをするのですか。

 ビジネスにリアルタイムで対応したいと考えている顧客企業のための戦略です。ビジネスプロセスとITツールを結合させれば、自動的にこれらの変化に対応することができる、これがポイントです。

---それはシステムインテグレーター企業の仕事とどう違うのでしょう。米EDSは企業に入り込み、クライアントのビジネスニーズを満たしているのではないでしょうか。

 アダプティブエンタープライズは、アウトソーシングを進めるための単なるプログラムではありません。EDSの議論は多分、「我々が面倒をみるから料金を払いなさい、実行するのは我々の社員であり我が社です」といったものです。

---必ずしもそうではありません。EDSは、アウトソーシングを請け負う企業であると同時にシステムインテグレーターでもあります。システムインテグレーションの部分は、あなたがおっしゃっていることと同じように思えます。つまり、HPはビジネスプロセスとテクノロジーを連携させるという部分です。

 今言ったこと以外にも、顧客はコンピューティングをどう展開すべきかという新しい岐路に立っている場合があります。つまり、コンピューティングとビジネスプロセスを結びつける場合です。考えなければならないことはたくさんあります。HPには、ハードウェアやトポロジー、ネットワーキングについて、そしてサービス面についても深い理解があります。

---その点に関して、いまだ混乱があるようです。先月のGartner会議で、一部のIT関連の参加者は、Carly FiorinaがHPのアダプティブエンタープライズで何を言いたいのか理解できなかったと言っています。メッセージが不明確だった、または再考が必要と感じていますか。

 メッセージが不明確だとは思いません。アダプティブエンタープライズは、ビジネスに影響を与える変化にダイナミックに順応できるようにすることと定義しています。Carlyも、アダプティブエンタープライズは1つの手法だと言いました。アダプティブエンタープライズそのものを購入することはできません。それは一緒に考えて構築しなければならないものです。「結局、アダプティブエンタープライズは手法なのか、それとも最終的な状態なのか」という疑問と混乱が生じたことには驚いています。これは商品ではありません。また、特定のスピードで稼動する1つのハードウェアでもありません。そんなものではないのです。

 ユーティリティ、グリッド、他のどんな言葉が使われるにせよ、次の10年間はビジネスプロセスとIT資源の結合、それにダイナミックな再配分が特徴になると思います。コンピューティング資源の需要と供給を自動的にマッチングする時代と言わせていただきたい。それがより弾力的で順応性のあるものになるのです。

---しかし、SunやIBMがそれを実現しようとしているのではないですか。IBMとSunは大金を投じて自社のソフトウェアと各々のユーティリティコンピューティングプログラムを連携するようにしています。企業と一緒に考えて対応するという以外に、HPは何をしているのですか。

 面白いですね。HPは25億ドルをアダプティブエンタープライズに投資しました。非常に健全な研究開発投資です。だから、HPが技術に投資していないという話には反対です。

---アウトソーシングもアダプティブエンタープライズの一環ですか。

 可能性はありますが、全てではありません。まず初めに、我々は企業と話し合いの場を持ち、事業戦略について尋ね、我々の境界線を設定します。ツールも人員も揃っているので、(自社のIT業務は)自社で保持したいと率直に伝える顧客企業もいますし、そうでない企業もあります。ですから、一概には言えません。分類もできません。我々の戦略は、顧客企業が変化にリアルタイムで対応できるようになることです。ビジネスプロセスとIT資源を1つに結合させることでそれは可能になります。

---広い意味でとらえると、単に新しい形式のサービス事業でHPが利益を上げようとしているように聞こえます。新しいハードウェアやソフトウェアを売るわけではなく、サービスを提供すると。

 我々はコンピューティングの新しい10年に突入しようとしているのです。それがなんと呼ばれても構いませんが、人が公共サービスを利用するのと同じ方法でIT資源を利用するようになるというものです。家に発電機がなくても、どこかに電力網がありそこにコンセントを差し込むだけです。

---しかし、まだ大半の人がそれをコンピューティングの分野で経験していません。

 それが実現するかどうかは、今後数年かけて議論することです。しかし、この新しい段階では、過剰投資の必要がなくなるというものです。使った分だけ支払うのです。資産を今よりももっと重要なものに置き換えることができます。ユーティリティコンピューティングの可能性と、アダプティブエンタープライズの可能性には一部共通する部分がありますが、これらが同意語だとは思いません。ユーティリティという言葉は濫用され、間違って定義されている言葉だからです。

---何が必要ですか。

 ビジネスに影響を与えるあらゆる変化に、早急に対応できる本質的な能力を持つことです。

---しかし、それは既存のものとどう違うのでしょう。

 ある顧客の例を挙げましょう。米Targetにはあるビジネスポリシーがありました。商品をクレジットカードで購入しても、返品すれば現金と引き換えられるというものです。これは顧客にとって便利なものでした。問題は、誰かがクレジットカードを盗んだ場合です。Targetは対応に5日かかっていました。そして泥棒はこのことを知っていたのです。ですから、返品された商品を現金と引き換えるというビジネスポリシーによって、同社は損をする可能性がありました。しかし今では、この対応を1分以内に行っています。

---それでは、いわゆるパラダイムシフトというのは何ですか。

 かつてITセンターは技術者が運営するコストセンターで、ビジネスをサポートするものと考えられていました。しかし今では、IT部門の目標がビジネス戦略やプロセスにしっかり結びついています。これがパラダイムシフトです。

---しかし、それは今までもずっと目標とされてきたのでは。

 昔はこういったことを実行するのは非常に困難でした。昔のコンピュータには業界標準が欠けていたので、コンピュータ同士がコミュニケーションするには特別な変換ソフトが必要でした。多くの手作業も必要でしたし、必要なインターフェースがありませんでした。そして、変換ソフトを自ら作成する必要がありました。しかも、ベンダーから新しいソフトウェアが発売されるたびに、変換ソフトを変更しなければならなかったのです。その結果、過剰投資となり、その管理のために必要以上の人員を裂く必要があったのです。

 しかし今、変化をくぐり抜け、ITはビジネスのためのビジネスとして運営されています。ITはビジネスをサポートするものではなく、「このマシンは前のものよりもずっと速い」とか「これはキラーアプリだ」といった理由で物事が決まるようなコストセンターでもありません。今重視されているのは、投資対効果(ROI)です。

---申し訳ないが、それは15年以上も語られてきたことです。あなたは過剰投資についても話されましたが、ハードウェアのコストが下がってきている現状で、そんなに大きな問題になりますか。つまり、10年前には1台25万ドルもしたサーバーが、今は1万ドルで買えるかもしれません。

 たしかにROIはバブルの時代にも話題となりました。しかし、それを実践した人はほとんどいません。しかし今、人々はROIについて真剣に考えるようになり、ITもビジネスの評価基準を基づくビジネスとして運営する必要があると言い出しています。財務会計について、昔よりも議論されるようになりました。ITプロジェクトにおいて財務的な説明責任が生まれています。ですから、新鮮味がないというあなたの意見には反対です。

---ベンダー側にも非難される点があるのではないですか。ほとんどの大手ITベンダーは、ことわざにある「鶏小屋を守る狐」のようなものです。大手ITベンダーは、自社の製品とサービスで数百万ドルの大型契約をおし進めました。最高情報責任者(CIO)や最高財務責任者(CFO)がROIについて考えていなかったわけではありません。

 答えはあなたがおっしゃるほど単純ではありません。業界関係者の多くは、インターネットやY2Kに備えて投資を進めなければ遅れをとるのではないかと感じていました。しかし、私たちにはWebサービスの標準がありませんでした。その後Webサービスが話題になり、標準化会合で議論されました。それ以来、ビジネスプロセスを構築するための共通言語が強く推進されています。これが実現したら、必要なIT装備は少なくてすむのです。

---こういった大げさに聞こえる取り組みを提供している企業と話をしていると、ITは危険な状態にあり、企業は自社のシステムに順応性を取り入れる方法がわかっていないように聞こえます。

 問題なのはIT部門ではありません。ビジネスが絶滅の危機にさらされているのです。変化に対してリアルタイムに対応ができなければ、駄目になるのです。取るべき唯一の方法は、ビジネスとコンピュータ資源を結びつけることです。

---それはITプロジェクトに関する決断をするCIOにとって、どんな意味があるのでしょうか。

 ビジネスとITの境界線が曖昧になっています。あるCIOから聞いた話では、彼らにはもうITプロジェクトなどないそうです。今あるのは、ITが問題の1つとして存在するビジネスプロジェクトです。しかし、こういったプロジェクトを検討したり着手したりするためには、CIOの存在が絶対不可欠です。CIOの役割は変わりつつあります。これは最近の10年間で起きている面白い変化です。

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