Michael Weissがファイル交換サービス事業に帰ってきた。しかも、素晴らしいタイミングで。
米Streamcast Networksに新しい最高経営責任者(CEO)として就任したMichael Weissは、連邦裁判事が「StreamcastのMorpheusなどのファイル交換ツールは合法」という、レコード/映画業界を驚愕させる内容の判決を下した数日後、古巣に戻ってきた。彼はわずか2年前に同社を去った元CEOでもある。
新しい判決の下、Streamcastと同社を支持するベンチャーキャピタリストは再び元気を取り戻そうとしている。新しい展望が開けたのだ。法廷論争やそれに伴う費用の爪痕は残っているものの、著作権保有者の主張を覆し、とうとう同社のソフトウェアビジネスが合法的であると認められたのだ。
Weissは長年Hollywoodと闘い続けてきた。1970年代に当時珍しかったビデオレンタルチェーンを開始、1984年にはHollywoodに対抗するために他のビデオ店経営者の組織化を促し、映画業界がレンタルビジネスへ支配力を強化しようとする動きを阻止した。
Hollywoodはこの闘いに負けたが、結局、映画業界はビデオレンタル業界からの収入で活気づいた。Weissはインターネット上のPtoPファイル交換も同じ結果に落ち着くはずだと確信しており、他のPtoP支持者と意見を共にする。
過去1年半の間、Streamcastと同社のMorpheusソフトウェアは苦境に耐えてきた。かつては最も人気のあるソフトウェアだったが、Gnutella技術に乗り換えてからユーザー数が激減してしまったのだ。そしてライバルのKaZaAは、現在PtoP界の王者として揺るぎない存在となっている。
同社のような小規模企業にとって、裁判費用も痛手であった。1年前には同社の弁護士が、Streamcastは著作権訴訟に必要な費用を払い続けることができないと法廷で発言し、その後すぐに新しい弁護チームが編成されている。
ただ、先月末の判決の少し前、Streamcastは主要なベンチャー投資家グループであるTimberline Venture Partnersから大幅な増資を受けている。後援者が引き続き楽観的な見方を示したこと、そして新しい資金を得たことによって、Streamcastは新たな段階を迎えるはずだと、Weissは言う。
CNET News.comは先週のWeissとのインタビューで、判決後の動きとネット上におけるデジタル音楽の今後について聞いた。
---StreamcastやPtoP業界全体にとって、4月25日の判決にはどのような意味があったのでしょうか。
Streamcastに明るい未来があることを意味する判決でした。新たな時代の幕開け、我々にとって再スタートの時がきたのです。暗闇からやっと抜け出すことができました。これにより、主要企業との取引やパートナーシップの動きが始まることでしょう。相手は広告主、レコード会社、個人など様々です。うまくいけば今後、大手企業やアーティストと組んで、潜在顧客に効果的に訴えかける配信チャネルとなるでしょう。
---就任されてまだ数日ですが、過去を振り返ってみて、訴訟問題がPtoP業界に与えた影響は何でしょう。業界のビジネスが妨害されましたか。また、新技術の開発を踏みとどめる原因となっていたのでしょうか。
訴訟問題は暗雲のようなものでした。問題は、誰に責任があるのか、レコード/映画業界は次に誰を標的にするつもりなのか、という点にありました。しかしその雲はもはや消えました。判決によって、私たちの合法性が認められたのです。判決内容はゆるぎないもので、上告の余地は残されていないはずです。
---判事はPtoPソフトウェアを使った人々の行為が合法であるとは言っていません。またStreamcastのサービスを利用した直接的著作権侵害が発生していることに言及しました。これについてStreamcastにできることはありますか。Morpheusなどのソフトウェアを使った著作権侵害が多発していますが、何か対策はあるのでしょうか。
繰り返しますが、著作権侵害が発生しているとしても、それが多数であるかは分かりません。我々にできるのは高機能のPtoPソフトウェアを提供することだけです。ソフトウェアを使って何をするかはユーザー次第なのです。判事が言ったように、著作権を侵害していないユーザーもたくさんいます。皆がPtoPネットワークを違法行為のために使用しているというのは、間違った見方です。
---過去にもStreamcastのCEOを経験し、後には客観的な立場から同社を見る立場に もありましたね。Streamcastにどのような変化を期待していますか。
業界トップになりたいですね。以前のように、MorpheusがDownload.comの人気ソフトウェアランキングのトップ5に入るようになることを望んでいます。それが我々にとってのスタート地点です。しかし、そこに到達するためには、顧客の声を聞き、顧客が望むようなソフトウェアと機能を提供する必要があります。当初Morpheusが成功しNo.1となった要因は、コミュニティにありました。ユーザーにコミュニティを構築するツールを提供したのです。これこそが我々が継続しなければならないことです。PtoPは人と人をつなげること。そのために我々にはもっといい仕事ができるはずで、それを実行しようとしているのです。
---Gnutellaの技術はKaZaAやGroksterが使っているFastTrackシステムほどパワフルではないと批判する人もいます。
Gnutellaは日々改良されています。Gnutella改良のため尽力している世界の開発者による巨大なフォーラムもあります。その中には、Gnutella技術をよりパワフルで頼れるものにするという試みもあると思います。Gnutellaはすぐに最高の技術となるでしょう。実際には、Gnutellaは今のままでも十分だと思いますが。
--- GnutellaコミュニティにおいてStreamcastは主要な役割を果たしているのですか。
これまでは、さほど積極的ではありませんでした。しかし、Gnutellaコミュニティを支援していく計画はもちろんあります。オープンソースの世界ですから、我々も参画していく予定です。
---Appleが音楽ダウンロード事業に参入しましたが、PtoPの世界になんらかの変化をもたらすと思いますか。
AppleはPtoP業界に入り込むわけではありません。Appleが提供するのは音楽ダウンロードサービスです。それは我々のサービスとは違います。我々は、音楽ダウンロードサービスは提供していません。iTuneやPressplayなどにとって、PtoPはコスト効率よくターゲットに訴えるための配信プラットフォームを提供することになるかもしれません。
---AppleはMorpheusやKaZaAのようなソフトウェアを、ほかの有料サービスと同様、直接の競合相手と見ています。この見方は正しいと思いますか。それとも、これらのソフトウェアは補完的な役割を担うと見ていますか。
補完的な役割だと見ています。ここ2週間ほどMorpheusやPtoPがいろいろなものと比較されているのは興味深いことです。PtoPについて非常に乱暴な意見も出されていますが、全く根拠がないと思います。
---今までのところ、PtoPで不動の成功を収めたビジネスモデルはまだ見受けられません。この問題はどのように解決できるとお考えですか。
成功したビジネスモデルはあると思います。広告です。やるべきことはまだまだありますし、それを実行していくつもりですが、広告が成功していないとは全く考えていません。
---現在PtoPの合法性に関しては、法廷によって異なる判断が出ています。今回の判決は間違いなく上告されるでしょう。最高裁の判断を仰ぐところまでいくかもしれません。Streamcastにはそこまで闘い続ける資金と意思がありますか。それとも和解を望みますか。
最後まで闘いますよ。25日の判決は正しいと信じていますし、最後まで変わらない判決だと考えています。逆境に耐え切れず途中で戦線離脱していった企業も数多くありましたが、Streamcastの取締役会も投資家もこれまで態度を変えることなく困難に立ち向かってきました。もちろんこれは巨人に戦いを挑むようなものですが、既に長い間続けてきたものです。Streamcastが戦い続けると分かっていなければ私は古巣には戻りませんでした。分かっていたからこそ私はここにいるのです。
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