新しい芸を覚えられない老犬も、新しいライセンスを理解することはできるらしい。
米国時間7月20日、Microsoftは驚くような発表を行った。同社の仮想化環境「Hyper-V」用のデバイスドライバのコードを、Linuxコミュニティー に提供したというのだ。
この動きは、低価格によって仮想化分野の競争を鈍化させる手法にMicrosoftが引き続き関心を抱いていることを示す一方で、Red Hat、Novellといったオープンソース陣営の対抗的な仮想化戦略をうまくかわすには、自らもオープン路線を取るしかないとMicrosoftが認識していることを表してもいる。
もっとも、本当に驚くべきなのは、これらデバイスドライバのコードがGNU General Public Licenseバージョン2(GPLv2)の下で公開されることだ。MicrosoftはかつてGPLを米国の敵と称したが、今ではそれを味方につけようとしている。
まるで神々が乱心したかのような出来事だ。
あるいは単に、GPLが資本主義の強い見方にもなることを、Microsoftが(ついに!)認識し始めたのかもしれない。Linuxカーネルに含まれるコンポーネントの多くがGPLv2でライセンスされている現状を考えても、今回の動きは当然の成り行きだ(ただし、これを当然と考えるには、今回GPLを採用したのがRed Hatなどではなく、ほかならぬMicrosoftだということを忘れる必要があるが)。
今回提供されたコードは、Linux用のデバイスドライバ3本を含む。Linuxはこれにより、自らがMicrosoftのHyper-V上で動作していることを認識し、それに応じた最適化を行うことが可能になる。市場調査会社IDCの表現を借りれば「自動最適化バージョンのLinux」になるわけだ。このデバイスドライバにはまだLinuxカーネルへの正式採用というプロセスが残っているが、GPLライセンスであることと一般用途向けであることから、おそらくぶじ採用されるだろう。
今回の動きは、Hyper-VをWindows以外にも幅広く開放するものだ。開放されていなかったことは、これまでHyper-Vの最大の弱点だったといえる。IDCが指摘するとおり、今回のLinuxへの対応は「Microsoftが大企業向け市場でVMwareと互角に勝負できるかどうかのカギを握る要素だ。大企業の多くはすでにVMwareの忠実な顧客になっている」
重要なのは、Microsoftが長年のLinuxパートナーであるNovellだけでなく、Red Hatを含む他の多くのLinuxパートナーを受け入れようとしていることだ。NovellはHyper-V向けとして認定を受けた最初のLinuxベンダーだが、Novellの「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)しか正式にサポートしていないことがHyper-Vの弱点となっており、これについては一部から不満の声が上がっていた。
しかし、どうやらMicrosoftは生まれ変わったようだ。同社は2009年7月、「Office 2010」では「Internet Explorer」ブラウザに加え、Mozillaの「Firefox」にも対応すると発表した。Microsoftは顧客が多様なソフトウェアの混在する環境にあることを理解しつつあり、(ゆっくりだが)対応を始めている。同社のプラットフォーム戦略担当シニアディレクターSam Ramji氏はこう述べている。「Microsoftのコミュニティーとオープンソースのコミュニティーはともに成長することになる。最終的には、それが顧客の利益につながるのだ」
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。原文へ
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