AppleはIntelの顧客である。Intelは新チップを発表した。従って、AppleはIntelのこの新チップを採用するだろう。
こういった一足飛びの論理は、SEOを意識した見出しを作成したり、過去に5回か6回発表されたものの、その後数カ月はどのデバイスにも搭載されないチップの発表記事を盛り上げる場合にはよくあることだろう。Intelは上海で開催されているIntel Developer Forum(IDF)で同社の「Atom」プロセッサを大きく取り上げ、その結果、数カ月前に流れていた「AppleがSilverthorneを採用する」といううわさにForbesが再び息を吹き込むことになった。
Silverthorneとして知られていた低消費電力プロセッサであるAtomは、携帯機器市場に切り込もうとするIntelの最新の試みである。Intelの発表したプレスリリースによると、Atomによって、モバイルインターネットデバイス(MID)として知られるハンドヘルド機器がノートPC並みのパフォーマンス(最低でも5年前のノートPC並み)を得られるようになる。同チップを採用した製品は、Intelのパートナー企業によって今夏にも市場に投入される予定だという。
では、Appleは素晴らしいマルチタッチテクノロジを搭載した同社の新しい携帯機器にAtomを採用するのだろうか?AppleはIntelにとってかなり異色のパートナーだ。IntelがPC業界に新たなテクノロジを提供し、PC業界がそれを積極的に採用するという構図は最近まで続いていた。これに対してAppleは自社が望むことを何であれ実行し、Intelのありとあらゆるイニシアチブをサポートするという義務感を何ら持つこともなく、Intelのロードマップからチップを好きに選んでいる。
思い切って言おう。Appleは第一世代のAtomをiPhoneやiPod Touchに採用する気はないはずだ。AtomはIntelの低消費電力設計チームにとって現時点での優れた成果物であると言えるものの、Appleが同社の製品に求める消費電力の低さはまだまだ達成できていない。2009年か2010年にMoorestownが登場すると事情は違ってくるかもしれないが、まだその段階には到達していないのだ。
このため、AppleがAtomを採用するとしても、iPhoneよりも大きなデバイスという新たなカテゴリの製品となるだろう。おそらくNewtonの再来となるか、Eee PCの類似品となるか、iTabletの一種となるだろう。基本的には、消費電力の問題に対処するために、iPhoneの2倍ほどの大きさにならざるを得ないはずだ。
私のことを懐疑論者と呼んでもらってもいい。しかし、iPhone 2.0(ソフトウェアとハードウェアの双方)がもうすぐ登場しようかという時期に、まったく新たなデバイスのカテゴリを追加するということは、Appleのエンジニアらがこの1年で取り組む課題としては大きすぎるとは思わないだろうか?それに、新しいiPod touchとiPod nanoの発売も9月に予定されているのに?
まず、エンジニアらはOS XをARMのチップからIntelのx86命令セットに移植しなければならない。もちろん、Mac OS Xは既にIntelチップ上で稼働しているため、これはそれほど難しいことではないかもしれない。Appleは、Power PCからIntelへと移行する数年前からMac OS Xで行っていたように、OS Xでもx86版を並行して開発しているということも実際にはあり得るのかもしれない。
Appleは3G iPhoneの認可プロセスを進めている可能性のある時期と平行して、新しいハードウェアプラットフォームも認可してもらう必要がある。これに取り組む価値は本当にあるのだろうか?率直に言うと、Intelとそのパートナーが販売するAtom搭載MIDはそれ程売れないだろう。これは、UMPCが過去にその外観や性能、価格を理由に売れなかった状況と大差ない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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