60年前の12月16日にベル研究所の科学者たち(William Shockley氏、John Bardeen氏、Walter Brattain氏)が世界初のトランジスタを作成したことで、それ以降の世界は大きく変わった。そこでトランジスタ60周年を記念する記事を今後何回かに分けて掲載する予定にしている。今回は、トランジスタの登場によって起こったことを大雑把ではあるが時代順にまとめてみた。
1.エレクトロニクスの夜明け。真空管は大量の電力を消費し、壊れやすいものであった。世界最初のコンピュータの1つであるENIACは重さ28トン、消費電力17万ワットで、その操作には複数のオペレータが必要であった。また、ENIACは1秒間に5000回の命令を実行することができた。1930年代に入ってから、ベル研究所は真空管を電子的なスイッチで置き換えることを目指していた。
2.非常識な支配者の誕生。技術的に言えば、Bardeen氏とBrattain氏が最初のトランジスタである点接触型トランジスタを発明した。そして同分野の研究を何年にもわたって行ってきていたShockley氏が接合型トランジスタを発明し、これが商用トランジスタの基礎となった。優秀だが専制的で傲慢だったShockley氏が名声をほぼ独り占めにしたのだ(トランジスタという名前は、ベル研究所の同僚であったJohn Pierce氏の命名によるものである)。
3.シリコンバレー。半導体設計者にとって第一級の会合である国際固体回路会議(International Solid State Circuits Conference:ISSCC)はサンフランシスコで開催されるにもかかわらず、その主催が(米国東部にある)ペンシルバニア大学であるのにはそれなりの理由がある。コンピュータ業界(Sperry氏を思い浮かべてほしい)の基盤はもともと米国東部にあったのだ。しかし、スタンフォード大学の当時の学部長であったFred Terman氏がShockley氏のような人材を募り始め、そういった人材がその後、Robert Noyce氏やGordon Moore氏、Eugene Kleiner氏といった人材をサンタクララ郡に呼び寄せることになった。そして、200万ドルもする家が建つようになったわけだ。
4.予測可能な進歩。エレクトロニクスの注目に値する面は、着実かつ予測可能なペースで進歩するということである。時間がたつにつれ、物は安く、速く、小さくなっていく。これは化学業界や薬品業界には当てはまらない。自動車業界が10年や20年だけでもムーアの法則に従ったならば、ロールスロイスの価格は1ドルを切り、現在道路を走っているどんなモデルよりも格段に速い車となっていることだろう(そうなっていたならば、車の大きさは1センチよりも小さくなっているだろうが、何らかのトレードオフは受け入れなければならない)。
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