和歌山市とマイクロソフトは10月5日、学校の情報化に向けた連携事業に合意した。和歌山市のすべての小学校に合計1300台のタブレットPCを導入し、児童の基礎学力向上に関する共同研究に取り組む。
市内の小学校に納品されたタブレットPCは富士通の「LIFEBOOK」。研究協力校の一つである和歌山市立有功東小学校には、コンピューター室に35台が設置された。
授業中には一人一台のPCを使って漢字練習などを行う。専用のペンで直接画面に文字を書き込むと、筆順やハネ・トメ、画の交差位置などが判定される。教員側は児童ごとの学習履歴および進捗状況をグラフで確かめられる。
左利きの児童に考慮して、漢字を書き込む欄が画面の左端に表示される専用のインターフェースも用意されている。また書き順を確認したいときには、正しい筆順に沿って漢字が書かれる様子が画面上で再生されるなど、紙の学習帳にはないPCならではの機能を多く備える。
児童にPCを使った授業の感想を聞いたところ、「書き順がわかって使いやすい」「紙より勉強しやすい」と気に入っている様子。教員から見ても「PCを使った授業のときは集中力が高くなる」。教員から問いかけられると積極的に挙手を行っていた児童たちだが、一度PCに向かうと教室内は静まり返る。漢字練習は没頭するタイプのソフトだという。
ただし、授業のすべてのをPCで行うわけではない。漢字が得意な児童はPCで練習を進め、不得意な児童には教員が横について教える。教員が一人一人に直接教えていくと、一人一分だとしても35人教室で35分かかってしまうが、PCを導入したことにより、教員の時間を有効活用できるようになった。
ほかにもシャープ製PHSのW-ZERO3(電話機能なし)を用いて、児童らが校外で撮影した写真を自動的に授業用のフォルダに保存できるようにするなど、コンピューターを意識しないで学習に集中できる環境を整えていくという。
和歌山市長は今回マイクロソフトと共同で小学校にPCを導入するに至った背景を次のように語った。「更新時期であったため、教育効果も検討して(タブレットPCの導入を)判断した。期待することは基礎学力の向上。基礎学力の向上は我々にとっても大きなテーマ。いま和歌山市の教育でできているかといえばそうではない。それを実現するうえで必要だった」
マイクロソフトは、教員が授業や校務で活用できるようなテンプレート提供、技術支援や研究アドバイザーの派遣などの支援を行う。すでに年表や白地図、絵日記など独自のテンプレートを開発しており、フィードバックによって新しいテンプレートも追加していく。
和歌山市では、マイクロソフトとICT教育推進プログラム協議会が共同開発したe-Learning型の研修カリキュラムを導入し、小中高等学校の教員を対象に1年間で延べ700名にオンライン研修を実施していく。
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