Microsoftは、医療記録のすべてをオンラインで保存できるようにしたい意向だ。これは壮大な目標だが、さまざまな課題をはらんでいる。
Microsoftは米国時間10月4日、個人の医療記録のすべてを1カ所から確認できる、「HealthVault」と呼ばれる構想を発表した。一般の人々が医療機器、多数の医療機関、保険会社から情報を確認できるほか、指定した医療機関と情報を共有したり、健康上の問題に関する情報を検索したりすることができる。
Microsoftでは、こうした医療記録の取り組みに加え、Medstoryの買収で得た医療検索エンジンの安全性を高めたHealthVault Searchの提供も予定している。
この構想は壮大だが、実現には何年もかかるだろう。まず、現在大部分の人は、自分たちの医療記録にアクセスしていない。Microsoftは、新しいHealthVaultサービスでは、病院、保険会社などが医療記録をユーザーに提供できるようになると発表しているが、HealthVaultの発表時点で、どの大手機関も参加を表明していない。
Drugstore.comの元責任者で現在はMicrosoftの医療事業を指揮するPeter Neupert氏は、「長い道のりになるだろうが、HealthVaultは重要な第1歩だと思う」と述べている。
ある種の医療記録と同様、あらゆるプライバシー、セキュリティの問題が伴うが、Microsoftは、誰がどの医療情報を閲覧できるかを各自で管理できるようにすることで、不安を軽減したいと考えている。
「私がしたいと思っていることは、医療機関と情報を共有し、情報をやりとりすることだ。ユーザーと医療機関の関係に加わろうとすることが不適切だとは思わない。私はぜひこれを実現したいと願っている」とNeupert氏は語っている。
Microsoftは6年前、消費者の情報をオンラインで管理するHailstormという開発コード名の取り組みを発表したが、失敗に終わった。このプロジェクトが最終的に消滅したのは、データのセキュリティ、プライバシーに関する懸念と、パートナーとの合意の難しさが原因であった。
今回の医療情報への取り組みにも同様の懸念が伴うだろう。新サービスはユーザー、医療機関、医療機器メーカーなどのパートナーに無料で提供されるため、MicrosoftがHealthVaultからどのように利益を得るかについては不透明である。
Neupert氏は、Microsoftのビジネスモデルは広告、特に検索関連の広告を柱にしていると述べた。
「私が医療情報を検索するのは、ほとんどの場合、必要だからだ。広告は有益なコンテンツになる」(Neupert氏)
Microsoftによる健康関連の取り組みは、2006年7月にAzyxxiを買収してから同社が取り組んでいる医療関連に対する動きと平行している。
Microsoftは人々が一斉にHealthVaultに殺到して登録するとは考えていない。「今後半年の間に何百万人ものユーザーが登録するとは思っていない」とNeupert氏は述べている。
パートナーの登録でさえ、長い戦いになりそうだ。初期の支持団体は、米国心臓協会(AHA)、米国肺協会(ALA)、米国糖尿病協会(ADA)などの組織で、MicrosoftがHealthVaultを構想通りに実現するのに必要な保険会社や医療機関は含まれていない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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