消費電力改善を追求するLinux開発者たち

文:Stephen Shankland(CNET News.com) 翻訳校正:編集部 2007年07月05日 14時02分

 腕時計の時間をあまり気にしなくて済むようになったら、楽になるのではないか。

 Linuxの基本機能を提供するカーネルの部分に大幅な変更が加えられたのは、こうした考え方からである。Linuxの新バージョンに搭載されている「ティックレスカール」について、プログラマーたちは、同オープンソースOSの効率改善につながると期待している。これは、プロセッサの消費電力を節約することを目的とした技術だ。

 電力効率の向上はどのOSでも望まれていることである。効率改善によってバッテリの駆動時間が延長されれば、Linuxはポータブルコンピュータ分野で、Windowsに対する競争力をもつことになる。また、一般的に24時間稼働するサーバでは、増加する一方の電気料金を節約できる。

 現在進行中の開発作業はティックレスカーネルだけではない。Intelは、コンピュータのプロセッサを長時間使用して電力を消費しているソフトウェアを容易に見つけ出すソフトウェア「PowerTop」を5月にリリースしている。

 IlluminataのアナリストGordon Haff氏は省電力の取り組みについて、「非常に理にかなっている。宣伝に使われてきた最大処理能力は徐々に意味を失いつつある。一般的になりつつあるノートPCでは特にそうだ」と語っている。

 Linuxの技術が広く知られるようになるには何年もかかることがあるが、ティックレスカーネルは既にLinuxの主流になりつつある。

 Linuxの開発を指揮するLinus Torvalds氏は新しいカーネルについて、「リエンジニアリングはほぼ完了している」と述べている。高レベルのソフトウェアに関しては、PowerTopが「非常に有益で、実際に多くの人や(Linux)ディストリビューションがこれに関心を示しているため、ユーザーのアプリケーションにも確実に修正が加えられているようだ」と、同氏は加えた。

 長年カーネルのプログラミングに携わり、現在はIntelに在籍するArjan van de Ven氏によると、まだ作業は残っているが、かなりの展が見られるという。同氏は、「開発現場では現在、Linux搭載ノートPCのアイドル時の消費電力が、約3カ月前のコードベースと比較して15〜25%削減されている」と語っている。

チップの省電力化

 大量に電力を消費するコンピュータのパーツはほかにもあるが、なかでもプロセッサは多くの電力を消費する(大半の場合、その消費電力は100ワットの電球1個分以上とされる)。さらに多くの電力を消費するのがコンピュータの熱を排出する冷却ファンで、これをさらに上回るのがデータセンターの空調システムだ。

 しかし近頃は、チップメーカー各社がマイクロプロセッサに対し、最高速での処理が不要な場合は消費電力を落とす仕組みを組み込んでいる。チップの内部周波数が低下すれば電圧も低下し、消費電力も減少する。

 当然、ユーザーがスタンバイモードになるようコンピュータを設定すればプロセッサが省電力モードに入る。しかし、消費電力を節約するためにできることはほかにもある。ギガヘルツレベルの周波数をもつプロセッサは、信号のサイクルが10億分の1秒以下の長さしかないため、タイピングの早い人が2つのキーを押す間でさえ、チップは何度も低消費電力モードに切り替えるというような、細かな節電もあり得るのだ。

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