■ソフト開発/SE人材派遣
中国の名門校「北京大学」が資本金を全額拠出したIT(情報技術)企業「北大青鳥集団」が日本市場に再上陸する。大学の研究成果応用を目的に1994年に設立された同集団は、90年代後半にITシステム開発で日本に進出したが、受注が伸びず撤退した経緯がある。今回は新たに日本法人を設立し、エンジニアの人材派遣など中国の豊富なマンパワーを供給する戦略を進める。またベンチャー企業向けに100億円規模の投資ファンドも設立する方針だ。(河崎真澄)
北大青鳥集団は北京大学コンピューター研究所を母体に、94年に資本金400万元(現在のレートで約6200万円)全額を同大が拠出して設立された。ソフトウエア開発をベースに電子、エネルギー、医療など大学の人材や研究成果を民間に転用する“スピンアウト”型のビジネス。現在はグループ全体で1万5000人の従業員や5社の上場企業も抱え、総資産は80億元に達するという。
安倍晋三首相による昨年の訪中や今年4月の温家宝首相の訪日で日中関係の改善が進む中、資本金3750万円で日本法人「北京大学青鳥システム・ジャパン」を川崎市高津区に設立し、19日までに本格的に業務をスタートさせた。社長には北京大で日本語と経済学を学び、野村証券に勤務経験のある劉甚秋氏が就任した。東京・千代田区にも「本部」を置いた。
北京大出身者など有能で豊富なシステムエンジニア(SE)を抱える同集団として、日本企業からITシステムのオフショア(海外委託)開発受注をめざすほか、日本語の堪能な中国人SEを日本企業に送り込む人材派遣業も手がける。劉社長は年間で約10万人のSEが日本企業で不足するとみて、「1万人規模で中国人SEの人材派遣をめざす」と話している。
さらに日本のベンチャー企業がもつ先進的な技術の取り込みも狙い、年内にも北大青鳥集団から50億円程度を拠出、日本でも50億円程度の出資を募って投資ファンドを設立。「環境・省エネ、IT、自動車部品など、中国が求める技術をもつ日本企業に投資する」(劉社長)としている。工場の下水処理モニタリング装置技術など、中国で需要が広がっている環境保全分野で投資を狙う。
米国から大学を起点としたITビジネスが発展したが、中国の大学が直接出資する企業が、日本市場で法人設立も含む具体的な事業を展開するのは異例。定着すれば日中間の新たな産学協同として注目されそうだ。
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