2002年6月の世界スパコンランキングで、NEC製「地球シミュレータ」が突如トップに躍り出ると、米国は国を挙げて首位奪還に挑み、2年半で日本勢を追い抜いた。
ミサイルの弾道計算を発祥とするコンピューターは兵器の一種ともいえ、暗号解読や核兵器のシミュレーションなどさまざまな用途で利用が可能。このため軍事大国にとってスパコン世界最高は特別な意味を持つ。
ハードウエアだけで400億円という「地球シミュレータ」を超える計算機への投資は、日本では今回の次世代スパコンが初めて。しかし、米国は次々に国家プロジェクトを使ってIBM、SGI、クレイと米国内のコンピューターメーカーに発注した。
高速スパコンの実現には、パソコンやサーバーの単なる規模の拡大だけでなく、CPU(中央演算処理装置)のクロック周波数、メモリーの読み書き速度、それをつなぐ配線の高速化など先端技術のブレークスルーが不可欠だ。
また、構成要素となるコンピューターは市販化が可能だし、パソコンやサーバーといった下級コンピューターへの技術的波及効果も大きい。
今回、日本勢が次世代スパコンにかける約1100億円という巨額な予算は、日本では約十年に一度のペースでしかありえない巨大事業だ。理化学研究所は昨年秋に富士通と、日立製作所&NECグループに概念設計を並行して検討させてきたが、今回共同で行わせるのは米国にならった産業政策的な配慮もあるとみられる。
国民が1100億円の投資に納得するため、日本ではスパコンを産業社会に最大限に役立てる。理研では医薬や生命科学の解明に役立つ「人体シミュレーター」の実現に役立てる。また、物質の微細な世界での現象を仮想的に把握できるシミュレーターを産業向けにフル活用するため、企業100社以上からなる「スーパーコンピューティング技術産業応用協議会」が立ち上げられている。(原田成樹)
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