ユビキタスコンピューティング基盤技術の推進団体であるT-Engineフォーラムは12月1日、8ビットや16ビットなどの小規模なCPUに対応したリアルタイムOS「μT-Kernel(マイクロ ティーカーネル)」の開発に成功したと発表した。
T-Engineフォーラムでは、32ビット以上のCPUに対応したリアルタイムOS「T-Kernelファミリー」を開発していた。T-Kernelファミリーには、GUIやネットワークへの対応を必要とする組み込み機器向けの「T-Kernel」および「T-Kernel Standard/Extension」と、大規模な応用が見込まれるマルチコア、マルチプロセッサ対応の「MP T-Kernel」がある。
今回開発に成功したμT-Kernelは、小型組み込み機器の要求に合わせた仕様となっている。T-Engineフォーラムの会長を務める東京大学教授の坂村健氏は、μT-Kernelについて「T-Kernelのメモリ管理ユニット対応やタスク例外処理といった機能は省略しているが、小型組み込み機器に必要なメモリ領域の静的確保などの機能を追加している」と説明する。
T-Kernelは、主に携帯電話やPDA、自動販売機、カーナビ、PC周辺機器などに向いている。μT-Kernelは、テレビ、電話機、エアコン、洗濯機、リモコン、そして車載機器などでの利用が見込まれている。
坂村氏は、μT-Kernelの特徴として、T-KernelやMP T-Kernelとの互換性が高いことや、μITRON4.0に導入されたベーシックプロファイル上で作成したミドルウェアの互換性を考慮していることから、μITRONとの移植が容易なことなどを挙げている。
μT-Kernelは、YRPユビキタスネットワーキング研究所が開発した超小型アクティブタグ「Dice」と、アームの「ARM7」に対応したリファレンスコードを提供するほか、富士通、NECエレクトロニクス、ルネサス テクノロジの3社がμT-Kernelのリファレンスコードを移植すると表明している。
μT-Kernelは、「μT-License」の下で配布される。T-Kernelの「T-License」と同様、μT-Licenseもコードに変更を加えた場合、変更部分の公開義務はない。坂村氏は、「PC向けのOSと違い、組み込み用OSは変更部分に各社の組み込みノウハウがつまっていることが多い。競争力に直接つながることもあるため、公開したくない企業もいるだろう。LinuxではGPLを採用しており、変更部分の公開が義務づけられているが、GPLは組み込みには向かない。そのため組み込み用途に適したライセンスで配布する」と話す。
T-Engineフォーラムでは今回、T-Kernelの開発環境として「Eclipse」が利用できるようになったとしており、μT-Kernel用のプラグインも用意した。坂村氏は、「Eclipseが利用可能となったことで、Windows上での編集やビルド、デバッグ作業ができるようになった。組み込み機器の開発効率が大幅に向上し、開発要員の教育機関も短縮できる」としている。
μT-Kernelは、まずT-Engineフォーラムの会員に先行して公開し、2007年4月以降の早い段階で一般公開を予定している。
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