中国では、2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟するまで、政府機関においてすらMicrosoft製品の海賊版の利用が横行していた。
WTOの一員となった今、中国は正規ライセンスのないMicrosoftソフトウェアを一掃する必要がある。少なくともこうしたWindows製品の一部は、Linuxへ置き換えられる可能性が高い。
中国政府および自治体政府は、オープンソースソフトウェアの導入にすでに着手しており、Linuxをはじめとする代替ソフトウェアへの移行プロジェクトについて盛んにアピールしてきた。
中国政府では、科学技術部や統計局、労働社会保障部などを含む機関でLinuxが利用されている。地方自治体政府の中では、首都北京の市庁が2000台のLinuxデスクトップを使用している。
中国政府はまた、Linux以外のオープンソース製品もサポートしている。中国版の「OpenOffice.org」である「NeoShine」などがサポート対象製品で、同国政府はこれを政府組織のオフィスで用いる推奨生産性製品リストにも載せている。
調査会社GartnerのリサーチディレクターAndrea DiMaioによれば、「中国政府は、省庁では中国製ソフトウェアを使用するよう規定しており、これがオープンソース化の『強い推進力』となっている」という。もっとも、この規制では中国製プロプライエタリソフトウェアの使用は禁じられておらず、厳格な法適用が行われているわけではないようだ。例えば北京政府などは、「大量の」Microsoftソフトウェアを購入していると報じられている。
中国政府は折に触れオープンソースへの支持を口にしており、多くのオープンソース関連の取り組みや研究プロジェクトに対して、資金提供を行ってきた。2004年には、情報産業部が「Open Source Software Promotion Alliance」に投資して、中国のオープンソースソフトウェア産業の活性化を図っている。同国政府も、数々の他国のオープンソースプロジェクトに協力している。一例を挙げると、中国は韓国および日本政府とともに、MicrosoftのWindowsに替わるオープンソース製品の開発に取り組んでいる。さらに、オンラインサービスおよび通信アプリケーション向けのLinuxベースプラットフォームを開発するため、French Atomic Energy Commissionとも協働している。
GartnerのDiMaioは、中国政府がオープンソースに力を入れるのはそのコストが低いためであり、同時に地元産業に利益をもたらすためだと指摘する。一方、RedmonkのアナリストJames Governorは、中国には文化的および政治的理由もあって、オープンソースを強く志向していると話した。
「中国ではアメリカ帝国主義に対する不信感が根強い。Linuxは、米国企業が所有している製品ではないという点が受け入れられたのである。また、中国が共産主義国家であることも、オープンソースに有利に働いた」(Governor)
これに加え、中国政府の内部には、Microsoftソフトウェアには任意のコードが密かに埋め込まれており、米国政府がこれを不正に使用して、中国のコンピュータインフラストラクチャを停止させようと企んでいると懸念する者も存在する。
Asian Media Information and Communication CentreのリサーチディレクターMadanmohan Raoも、中国がオープンソースを促進する背景に反アメリカ主義があることを否定しない。「中国政府は、プロプライエタリコードの利用に関してはいささか偏執的だ。同国のシステムにバックドアが入り込むのを、彼らは恐れているのだ」(Rao)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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