ボストン発--Sun Microsystemsは、オープンソースモデルに従ってJavaソースコードを提供すれば、互換性のないバージョンが乱立する可能性があることから、ソースコードの提供には乗り気ではないと、同社のソフトウェア部門トップが語った。
Sunのソフトウェア部門エグゼクティブバイスプレジデント、Jonathan Schwartzは16日(米国時間)に行われた記者会見のなかで、同社はJavaの互換性の問題について懸念していることから、IBMの申し出に応じてJavaのオープンソース化に共同で取り組む可能性は低いと示唆した。
この記者会見で、Schwartzや他のSun幹部は、まもなくリリースされるJava Enterprise SystemのLinuxおよびWindowsバージョンや、連携強化が図られた複数のセキュリティ製品、Microsoft OfficeのマクロをJava Desktop Systemに変換する管理用コンソールなど、同社の製品計画の詳細も明らかにした。また、Sunは開発途上地域の国々に向け、Java製品バンドルの価格を人口に応じて設定する計画があることを認めた。
IBMの新技術担当バイスプレジデント、Rod Smithは先月、SunのバイスプレジデントRob Gingellにあてて、Javaをオープンソースにするよう促す公開電子メールを送付。IBM幹部らは、Javaソフトウェアの一部だけでもオープンソースにすれば、JavaをLinuxとともに配布しやすくなり、開発者の間でJavaが普及するだろうと述べていた。
先週IBMのある関係者は、同社が今後数週間中にSunとミーティングを行い、この件を話し合いたいと考えていると述べていた。Schwartzは16日、両社は交渉を続けているが、IBMの提案に関してはまだ話し合っていないと述べている。
Schwartzは、多くのオープンソースアプリケーションで採用されているGeneral Public License(一般公衆利用許諾契約書:GPL)では、ソフトウェアに多数のディストリビューションが分岐してしまうおそれがあることを指摘。その一例として、同氏はRed Hatの例を取り上げ、北米では同社がLinuxの事実上(標準ともいえる)ディストリビュータになっていると述べた。
「Javaはバージョン分岐とは正反対の存在だ。Javaの命は互換性であり、互換性は何にも増して重要なのだ」(Schwartz)
同氏は、Linuxの世界でみられるような互換性のない様々なバージョンが乱立する状況に、Javaの世界が陥ってしまうことをSunでは望んでいないという。「過去に目にした過ちを自ら繰り返したりはしない」と、同氏は15日に行われたCNET News.comとのインタビューのなかで述べていた。
Schwartzはまた、Sunのライセンス条件を遵守し、同社の定める標準との互換性を保つ者は、Javaのソースコードにアクセスできる点を強調した。このライセンスの仕組みを、いずれかのオープンソースモデルに変更すれば、Javaが異なるやり方で実装される例が出てきてしまうと同氏は述べた。
「IBMにJavaの異なる実装を認めたら、かつて我々が経験したMicrosoftへのJavaライセンス供与の顛末の二の舞を踏むことになる。あのライセンスを認めたおかげで、Javaのコミュニティは分裂してしまい、我々は何年分も後退し、しかもいまなお反トラスト訴訟の焦点となっている。今後そんな事態が起こることを私は許さない」(Schwartz)
これから登場するさまざまなJava製品
この記者会見の席上で、Sunの幹部らは、同社がLinux版のJava Enterprise Systemを60日以内に発表する計画であると述べた。Sunは、このJava製品バンドルの利用料を、従業員一人当たり年間100ドルとする。また、Windows版とHP-UX版のJava Enterprise Systemは、年末までに完成すると見られている。
また同社は、遠隔診断の機能を追加する予定だ。これによりSunは、顧客の承諾を得た上で、インターネット経由で問題を修復できるようになる。初期の診断ツールは、既にJava Enterprise Systemのバージョン2に組み込まれており、年内にこれが拡張されると、Java Enterprise Systemとセキュリティ担当のエグゼクティブディレクターSteven Borcichは述べた。
Borcichの話では、Sunは60日以内に、既存のアイデンティティ管理製品と、Waveset Technologiesの買収により同社が獲得したソフトウェアを統合する計画について、詳しく説明する予定だという。最終的には、このアイデンティティ管理ソフトが、SunのN1 Grid技術に統合される予定だが、これにより企業はネットワークの帯域幅やマシンの処理能力といったコンピューティング資源を、社内の従業員グループごとに供給できるようになると言う。
年末までに同社は、Java Enterprise SystemのコンポーネントであるJava Application Server 8のエンタープライズ版と標準版をリリースする予定もある。このバージョン8は、Java 2 Enterprise Edition 1.4仕様を利用しており、企業はWebサービスアプリケーションを動かすことができる。
4月には、同社はJava Studio Creator製品の初期評価プロセスに入る。これはJavaのプログラミングツールで、Webアプリケーションの迅速な開発を目的とするものだ。
Java Webサービス及びツールのマーケティング担当のバイスプレジデント、Joe Kellerによると、SunはEclipseの新たに結成された理事会との間で、Java Tools Communityとのオープンソース開発プロジェクトの業務について話し合いを行ったという。SunはEclipseの目標についての理解を深めたいと考えており、また新しいエグゼクティブディレクターの任命を待って、SunのEclipseへの参加についての話し合いを再開したいとの考えだとKellerは述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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