ペンシルベニア大学の研究者らが、アイスクリームショップの「Dairy Queen」からヒントを得た技術は、現在カーボンナノチューブを用いたプロセッサの製造で科学者らが抱える2つの問題を、いつの日にか解決するのに役立つかもしれない。
カーボンナノチューブは炭素原子のみから構成される細い筒のことで、他のほとんどの物質よりも高速に電気を伝え、かつ電子のロスがない。こうした性質を「Ballistic Conductivity(バリスティック伝導性)」と呼ばれている。しかし、すべてのタイプのナノチューブが同じ性質をもつわけではない。金属のように作用し、自発的に電気を処理するものもあれば、電気の増幅処理のみ行うものもある。そのため、ナノチューブ製のトランジスタでプロセッサを作るためには、メーカーは金属の性質を持つものを排除しなければならない、という問題がある。
第2の問題は、ナノチューブ製トランジスタをシリコン片上に配置することだ。NECとIntelでは、シリコンウエハの表面上にナノチューブを生成する実験的手法を開発した。金属の性質を持つナノチューブはその際に排除され、半導体と同質なナノチューブのみが残ることになる。
ペンシルベニア大学で開発された技術では、ナノチューブは現行と同じ設備や手法を用いて生成され、弱酸性で湿度の高い空気にさらされる。半導体ナノチューブと金属の性質を持つナノチューブは、磁場を使ってより分けられる。
ここで得られた半導体ナノチューブを溶液に流し入れ、接着物質のような点を持ったシリコンウエハをそこに入れる。ナノチューブは、接着物質のような点にくっつき、2つの点の間を接続する。余分な接着物質や余ったナノチューブは、ここで洗い流される。
プロセッサの製造にこの手法、あるいは同種の方法が用いられるのは何年も先のことだろうし、いくつかの技術的なハードルも残っている。しかし、理論的には同技術は複雑な回路パターンの生成に用いることが可能だという。
「チップをナノチューブの中に突っ込むという発想は、ちょうどアイスクリームの乗ったコーンをトッピングのためにチョコレートキャンディに突っ込んでいるようなものだ」と、この研究を率いているDanvers Johnstonは声明の中で述べている。「最終的には、回路を生成するためには、われわれが望む場所にのみナノチューブが付くようにしなければならない」(Johnston)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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