Sun Microsystemsは、携帯電話向けのJavaソフトウェアを発表した際、これなら一度コードを書くだけでどの携帯電話でも動作するプログラムがつくれると触れ込んでいた。
それから5年が経過したいま、「携帯情報端末プロファイル(MIDP)」と呼ばれるSunの携帯電話用Javaは、全世界にある14億台の携帯電話の約半数で、ソフトウェアダウンロード用に採用されている。しかし、どの携帯電話上でも動作するプログラムを書くことは、まだ不可能な状態にある。
これは、携帯電話市場におけるJavaの成功から生じた皮肉な副産物だ。MIDPのようなソフトウェアでは詳細部分の統一作業に時間がかかるが、携帯電話メーカー各社や各サービスプロバイダーは、毎年7億台も販売される携帯電話機の製造に忙しく、この作業の結果を待つことに前向きな姿勢を見せていなかった。
それどころか、NokiaやMotorolaなどの各携帯電話メーカーでは、それぞれ独自に修正を加えたMIDPを使って携帯電話機を開発してきた。
市場の当面の需要に応えなくてはならないため、各社のこのような対応は理解できるが、しかしこのような対応が「一度書けばどの環境でも動く」というMIDPの約束を主に台無しにしていると、Sunの幹部や携帯電話用ソフトウェアの開発者らは述べている。つまり、MIDPの互換性が失われた場合、ソフトウェアの開発時に複数のバージョンを用意しなくてはならず、そのための余分なコストや時間が、携帯電話本体の価格から着メロのダウンロード価格まで、携帯電話業界のあらゆる事柄に添加されることになる。
Tira WirelessのCTO(最高技術責任者)、Allen Lauは業界誌のJava Worldに、「この市場に参入する開発者にとって、Javaの分裂は成功と失敗を分ける大きな障害の1つになっている」と書いている。
先日サンフランシスコでSunのJavaOneカンファレンスが開かれたが、これに参加した開発者らは、開発者のオアシスとして作られたものがアリ地獄に変化したとの皮肉を口にしていた。なかでも、一番声高に不満を表明したのはNokiaの関係者だったが、これは世界で約3分の1の市場シェアを握る同社が、ほぼすべての機種にJavaを採用しているためだ。
NokiaのCTO、Pertti Korhonenは先ごろJava開発者を前に講演し、「分裂の解消が大きな問題として残っている。今日の量販製品は相互運用性が非常に重要であるため、分裂の影響を抑える必要がある。われわれは、この技術に関して、標準を簡略化し、オープンかつ公正で先が見通せるライセンス供与条件を採用する必要がある」と述べていた。
携帯電話業界はこの2年間で目を見張る前進を遂げたが、しかし携帯電話市場があまりにも多様化しすぎたため、「一度書けばどの環境でも動く」という最終目標の完全な実現は不可能ではないか、との思いがSunのエンジニアの間で広がりつつあると、SunのシニアディレクターEric Chuは述べている。同氏はMIDPの開発初期に大きな役割を果たした人物だ。
分裂問題を終息させるためのSunの取り組みは、今のところ物足りない結果に終わっている。同社はほぼ毎年、この問題に新たな側面から取り組んできた。最近では、携帯電話用ソフトウェアを認定し、それがさまざまなメーカーの携帯電話で動作することを保証する「Java Verified」プログラムを数カ月前に開始している。
これまでは、各携帯電話機メーカーが、一定の品質を満たしていることを保証するために独自にテストする必要があったが、それに比べるとこのプログラムは劇的な変化といえる。ただし、これがどこまでうまく機能しているかが明らかになるのはもう少し先の話だ。
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