Linuxの生みの親で、同OSの開発を指揮するLinus Torvaldsが、プロジェクトのソースコード管理用に「Git」と呼ばれる新しいツールを使い始めた。これまで使っていたシステムをめぐって論争が持ち上がったため、同氏はしばらく前からその使用をとりやめていた。
Torvaldsは今月はじめ、「BitKeeper」という管理システムの利用を中止し、Linuxの開発プロジェクトに参加する数百人のプログラマーが最新情報を電子メールでやりとりするという、昔ながらのやり方に戻していた。しかし、Gitへの移行により、Linuxプロジェクトはアップデートの流れをコントロールしたり、変更箇所を追跡するための自動メカニズムを再び手に入れたことになる。
Torvaldsは、BitMover(本社:カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)という会社が開発/販売するプロプライエタリソフトウェア「BitKeeper」を2002年に導入した。同氏は、これがLinuxプログラマーの生産性を向上させたと賞賛した。だが、それとほぼ同時に、周囲からはプロプライエタリなソフトウェアへの依存に対する反発の声が上がり始めた。
今年に入り、反対者からはさらに強い反発の声が上がっていた。BitMover創業者のLarry McVoyが、オープンソースコミュニティがBitKeeperを模倣しようとしているとし、不満を訴えた--特に、Open Source Development LabsでTorvaldsの同僚として働くAndrew Tridgellの取り組みは、名指しで非難された。Tridgellは、「SourcePuller」というBitKeeper互換製品の開発プロジェクトを進めていた。
米国時間20日に行われたインタビューのなかで、TorvaldsとMcVoyは、GitプロジェクトではBitKeeperとの互換性実現を一切追求していないと語った。このため、移行は困難だがMcVoyとは一切衝突しないことになる。
「早急に利用できるものが必要だった」とTorvaldsは電子メールのなかで述べている。「あらゆる面で至らない部分はあっても、自分のニーズに十分応えるようなものを実装することは可能だと確信している。既存のSCM(ソースコード管理ツール)を、カーネルのように規模が大きく広範囲に配布されるものに合わせて導入するより、(自分なら)独自に実装した方が早い」(Torvalds)
GitにはBitKeeperの経験も活かされている。それを示す明確な証拠が、いずれのツールも1つの一元管理されたデータベースにソフトウェアを格納していない点だと、Torvaldsは説明する。
「分散開発の本当のやり方はBK(BitKeeper)から学んだ。このやり方が、今のところはかなり成功している。BKとの互換性はないが、Gitは自分がBKを選ぶことになった経緯を活かして設計されている」(Torvalds)
同氏はさらに、SourcePullerでは当面の課題を解決できないと付け加えた。
「BKならできていたことを、SPでは1つもできない。最終的な結果しか分からない。また、SPとBKは併用できなければ無意味だ」(Torvalds)
Gitには、Linux本体のようにGeneral Public License(GPL)が適用され、約5〜10人のプログラマが「本格的に開発に携わっている」とTorvaldsは語っている。しかし同氏は、このプロジェクトがLinuxのカーネル開発作業以外にも役立つものになるとは予想していない。
「今のところ、Gitを使って得られるメリットよりは、それを使う苦痛のほうが大きい。ただし、具体的なニーズがあれば話は別だ。そのようなニーズは、カーネル開発プロセスにはあっても、ほかのプロジェクトにはあまり多くない(あるいは全くない)。カーネルの開発者にとっても、BKより使い心地が悪くなることは確かだ」(Torvalds)
McVoyはGitについて、「Linusが解決しようとしている問題には十分役に立つ」が、しかしこれは一通りの機能が揃ったソースコード管理システムではないと述べている。「Torvaldsはものすごい数のパッチを受け取っており、彼は自分の使用するソフトウェアをそのために最適化している」(McVoy)
「Linusは自分が必要とする機能の5%に焦点を絞った。Linusの立場なら誰もがGitをとても気に入るだろう。だが、SCMシステムにもっと普通の事柄を期待する普通のユーザーなら、Gitには物足りなさを感じると思う」(McVoy)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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