ウェブの標準化団体であるWorld Wide Web Consortium(W3C)が、XMLベースのソフトウェアの高速化に向けた取り組みを進めているが、これが実現すれば携帯通信事業者やテレビ局、さらには軍隊までがその恩恵を受ける可能性がある。
ただし、一方では、W3Cが好むアプローチでは互換性の点で大きな問題などが生じる可能性があるとする批判の声も上がっている。
XMLは、発注書などのビジネス文書をフォーマットしたり保存するための手法として、急速に普及しつつある。しかし、特定の用途--たとえばセットトップボックスへのデータ送信や、携帯電話へのインタラクティブなプログラムの配信などには、XMLを使ったデータでは重すぎるとする意見もある。
「XMLはあまりにも成功しすぎた」とW3CのRobin Berjonは言う。「われわれは、もともと想定してなかったあらゆる状況でXMLを使い始めている」(Robin Berjon)
XMLがもっと高速に動くようになった場合、たとえば携帯電話会社ではそれを使って複雑なプログラムを求める消費者の需要を満たせるようになる。また空軍も、戦闘機などに搭載する組み込みコンピュータ用アプリケーションで、より高速なXMLフォーマットを使うことに関心を示している。
W3Cのある委員会は先ごろ、従来のようにテキストフォーマットでXMLデータを保存することをやめ、代わりにバイナリフォーマットの標準を策定することで、この問題に取り組むよう勧告を出している。W3C作業グループの勧告は、一般に正式な標準策定活動として受け止められるため、W3CはXML標準の大幅な変更に向けて一歩前進したことになる。
この勧告は、これからW3CのAdvisory CommitteeとW3Cの理事の承認を受ける必要がある。しかし、W3CでXML関連の活動を率いるLiam Quinは、バイナリXML標準を策定するための票決は今夏の終わりにも行われることになるだろう、と話している。
だが、XML専門家の間では、すでにこの問題に関する論争が起こっている。これらの専門家は、仕様の大幅な変更によって互換性の問題が生じることと、導入時に重大な障害に直面することを懸念している。
ボストンで2月に開催された会議の参加者は、XMLの高速化に向けたさまざまな技術的アプローチについて議論を交わしたが、参加者のなかにはそもそもバイナリXMLの取り組み自体の必要性に疑問を投げかける者もいたという。
「長い目でみれば、業界が自然にこの問題を解決することになると考えられている時に、短期的な問題解決のためだけにXMLに手を加えるべきではない」と、この会議に出席したIona TechnologiesのCTOであるEric Newcomerは指摘する。Newcomerは「現在のXMLのパフォーマンスはそれほどひどいわけではなく、しかもこの論争は10年ほど前にさかんに戦わされていた議論を思い出させるものだ。当時は誰もが、WWWは遅すぎて決して普及しないだろうと言っていた」と述べている。
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