「XMLは誰もが意識せずに使う日常生活の道具」--MSのXML開発者

 World Wide Web Consortium(W3C)が勧告したExtensible Markup Language(XML)1.0仕様の著者の1人であると同時に、XML設計ソフト「InfoPath」を開発するなど米MicrosoftでXML設計者を務めるJean Paoli氏が来日した。日本で始まる「e-文書法」の施行に関し、日本政府の関係者と議論するために来日したが、電子自治体におけるXMLの活用例などを挙げて、XMLの意義や可能性について語った。

米MicrosoftのSenior Director, XML ARCHITECTURE, .NET Platform StrategyのJean Paoli氏

 XMLは、一言で言えば、テキストで表現可能なオブジェクト指向データベースである。異なる情報システム同士を連携させるためのメッセージであり、異なる情報機器間でデータを交換するための共通フォーマットである。逆に言うと、情報システムや機器同士に共通の言葉やデータを表現するものがXMLである。

 Jean Paoli氏は「エンドユーザーがXMLを使っていることを意識しなくて済む点が重要」と力説する。エンドユーザーは、XMLの専門家ではないからだ。業務の現場にいるエンドユーザーが、意識することなく異機種間でデータを交換できる仕組みが必要であり、こうした仕組みは、すでにワープロソフトのWordなどエンドユーザーが利用する多くのアプリケーションで実現できている。

MSの歴史はXMLの歴史

 MicrosoftはJean Paoli氏が入社した1996年からXML標準化に取り組み、XML対応製品を市場に投入してきた。Paoli氏は「MicrosoftによるXML対応製品の歴史はそのままXML関連仕様の進化の歴史でもある」と述べ、その歴史は「大きく分けて3つのステップに分かれる」としている。第1段階として、データベース管理ソフトのSQL ServerやWindows Serverなど、データを格納するサーバサイドをXMLに対応させた。第2段階は、システム間でXMLを使ってデータを連携させる試みだ。MicrosoftやIBMなどから成るXMLの業界団体が現在も相互運用性の検証に取り組んでいる。そして第3段階は、オフィスソフトであるOffice 2003 SystemのデータをXML化したことだ。

 OfficeのXML対応のインパクトをPaoli氏は、「XML技術を知らない誰もがXMLを生成し、データを交換できるようになった」と説明する。異機種間での相互接続性を利用した情報システムを、現場で業務に携わる人がXMLの存在を意識することなく利用できるというわけだ。アプリケーション開発者から見れば、Officeで扱うデータをどのようにXMLで表現するかもまたXMLで表現可能であるため、業務に合ったXMLの記述方法を選ぶことが可能だ。

電子政府を支えるXML

 この一方で、Paoli氏が協力してきた案件は、電子政府や電子文書などの事例が多い。XMLを使い、紙を電子化してアーカイブする方法をコンサルティングしてきた。アーカイブする文書には、出生証明書や税金の資料、領収書などがあるが、こうした公的な文書は、「どのようなソフトを使ってでも読み出せる必要があるとともに、恒久的に100年後にもデータを読み出せる必要がある。こうした要求を満たすには、XMLが向いている」(Paoli氏)というわけだ。

 また、Paoli氏は「XMLによってビジネスのやり方も改善できる」としている。文書の電子化の効果はコスト削減だけに止まらず、XMLによってデータの検索速度が上がったり、検索する際のユーザビリティを向上させたりできるというわけだ。利用者の問い合わせに対する応答速度が上がることによって、サービスの向上にもつながる。

 これを、具体的な例を挙げてPaoli氏は説明した。EU(欧州連合)では通関処理のルールをXMLで表現している。デンマーク政府は、税金など各要件ごとに約7000個のXML記述方法を定義して電子政府を実現した。仏国にあるGlairasと呼ぶ地方自治体では、公衆電話機を操作して市民が食堂の予約など各種の行政手続きを実施できるようにしているが、電話機はリクエストをXMLで生成し、サーバに送信している。

 また、米国North Carolina州ではハイウェイ・パトロールの警官が、Office 2003のデータ作成ソフトであるInfoPathを導入したタブレットPCを用い、現場でデータを入力している。生成されるデータはXMLである。

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