マサチューセッツ州ケンブリッジ発--Cisco Systemsがマサチューセッツ工科大(MIT)の研究者らと手を組み、新しい通信技術の開発に乗り出すことになった。同社ではこの取り組みから、いずれは製品化される技術が登場することを望んでいる。
CiscoはMITのMedia Labが進めるDigital Life Consortiumの活動に資金を提供していく。その見返りとして、Ciscoには同ラボの各プロジェクトに目を通し、研究の方向性についての発言権を得ると、CiscoのCTO(最高技術責任者) Charles Giancarloが米国時間3日に明らかにした。同社では2000年よりMITと共同でいくつかのプロジェクトに取り組んできている。
今回の関係拡大の一環として、CiscoはMITの研究から生まれた技術の一部について、独占的にそれを利用できる権利を得る。どの技術が対象となるかについては、現在両者の間で話し合いが行われているところだ。
Ciscoでは、この研究が実際の製品開発に役立つと期待している。同社は2004会計年度に約33億ドルの研究開発費を計上している。この資金の大部分は社内での製品開発に使われているとGiancarloは述べたが、しかし同社は、商品化のめどが立たない段階での次世代技術に開発に関して、学術研究をサポートしたり科学者と協力している点も付け加えた。
「研究者のコミュニティは、実験的な技術を探り当てるのが本当に上手だ。それに対して、Ciscoでは製品開発のほうが多い」(Giancarlo)
Ciscoは今回のMITへのものと同様の投資を、UCLAやUCバークレー、スタンフォードといった各大学に対して行っている。同社はまた National Lambda Railの光ファイバネットワークのような研究の取り組みに機材を提供している。同ネットワークは各研究機関が独占的に利用するために構築しているものだ。
MITのDigital Life Consortiumで行われている研究のなかには、メッシュネットワークの問題に取り組むものもある。このネットワークには、通常のネットワークに見られる中央の通信ポイントがなく、接続した機器同士がダイレクトに通信を行う設計になっている。そのため、たとえばメッシュネットワークを利用する携帯電話の場合、ユーザーのかけた電話が中央の中継地点を通らなくてもよくなると、MIT Media Lab創設者の Nicholas Negroponteは説明した。
メッシュネットワークを使えば、過疎地域や開発途上国で、通信キャリアが敷設したネットワークに代わるものを実現できるとNegroponteはいう。「メッシュネットワークはとても安く通信インフラをつくるための方法だ」(Negroponte)
同日MITの研究者らは、いわゆるスマートデバイスプロジェクトのデモも行った。このプロジェクトは、オフィス環境でのメッシュネットワークの潜在力をわかりやすく示すものだ。デモルームの一隅には、研究者がセットアップした垂直の金属製枠組みがあり、さまざまな機器を接続できるようになっていた。
これに使用された機器は、比較的廉価なXScaleプロセッサを搭載した携帯端末を改造したもので、ビデオ会議やグラフィックレンダリングのような負荷の高いタスクを、ネットワーク上にある他の計算力を組み合わせ、情報を共有しながら処理することが可能になっている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス