ネット起業家のAdam Stilesはこれまで、Internet Explorer(IE)の開発がほとんど止まったままになっていることをそれほど苦にしていなかった。しかし、そんな同氏がいま、この状態に不安を感じている。
Stilesoftという会社の創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるStilesは、パワーユーザー向けのIEブラウザとしてNetCaptorを販売してきた。NetCaptorはIEのレンダリングエンジンを利用して、タブブラウザなどの比較的高度な機能を提供するソフトウェアで、すでに3年以上もIEへの大幅な機能追加がない状況に乗じて利益を上げてきた。
「これまで、IEの開発がスローペースであったことが我々の最大のチャンスだった。そもそも私がNetCaptorを開発したのは、IEに苛立ちを感じていたからだ」とStilesは述べている。
しかし、IEに便乗したブラウザアプリケーションを開発する、Stilesのようなサードパーティのメーカーはいま、IEの停滞が広く指摘されている状況について、それがチャンスであると同時に足を引っ張る問題になっているとの懸念を抱いている。IEに苛立ちを覚えたユーザーが、他のブラウザ--なかでもMozilla Foundationのオープンソースブラウザ「Firefox」に乗り換えてしまう可能性があるからだ。
このトレンドはソフトウェア開発会社にも影響しており、これまでIEだけに対応するサービスを提供していたポータル大手のYahooや検索大手のGoogleなどが、複数のブラウザに対応する戦略をとり始めている。こうした動きは、オープンソースのソフトウェア開発を進める動きが、ウェブをIE専用のショッピングツールにしようとするMicrosoftを阻止するのに成功したことを示す、ブラウザ戦争のターニングポイントとなるかもしれない。
「Yahooでは顧客の要求に答えて、常に新たな製品プラットフォームの評価を行っている。Yahoo ToolbarはInternet Explorer用に提供されているが、Firefoxや他のブラウザのユーザーが我が社の製品を利用できるよう、我々は現在Mozillaのようなサードパーティのオープンソース開発者と協力している」とYahooの広報担当者は述べている。
Googleの関係者はこの件に関するインタビューに応じなかった。しかし同社のウェブサイトでは、IE以外のブラウザ用ツールバーに需要があることを認め、その提供を検討すると公約した文章が公開されている。
また、GoogleのFAQ(よくある質問)ページには、次のような記述がある。「我が社ではまず、MicrosoftのInternet Explorer用のGoogle Toolebarをリリースすることにしました。我が社は現在、NetscapeやMozillaなど、他のブラウザ互換のツールバーを提供できるかどうかを検討中ですが、いまのところ、これらのバージョンは提供されていません。ご不便をおかけして申し訳ありませんが、我々は今後のToolbarに向けて、この助言を参考にさせていただきます」。
Stilesによると、NetCaptorのダウンロード数は現在も増え続けており、1日約10万人以上のユーザーがアプリケーションを利用しているものの、アプリケーションの成長率は目に見えて鈍化しているという。
「Firefoxが影響したことは明らかだ」とStilesは述べ、さらに「ユーザーがFirefoxに流れたのがはっきり分かる。ユーザーが『Firefoxに移行するので、利用を止めます』というメールを送ってくるケースもある」(Stiles)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」