経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は組込みソフトウェアスキル標準を策定し、開発者の育成を図る方針だ。6月22日に都内で開催された「組込みソフトウェア開発力強化推進フォーラム」では経済産業省 組込みソフトウェアスキル標準部会の部会長を務めた東海大学 電子情報学部教授の大原茂之氏が講演を行い、スキル標準策定の基本方針を紹介した。
デジタル家電や携帯電話などの高機能化に伴って、組み込みソフトは開発量が年々増加している。しかしその一方で、新製品の投入サイクルは短くなり、開発期間も短縮している。さらに組み込みソフトの場合、不具合が起きた際には製品自体を回収する必要があり、経営基盤に大きな影響を及ぼす事態も生じている。
経済産業省 組込みソフトウェアスキル標準部会の部会長を務めた大原茂之氏 |
こういった背景のもと、経済産業省は2003年10月から組込みソフトウェアスキル標準部会を開催し、スキル標準に関して検討を進めてきた。大原氏は「組み込みソフトは日本企業にとって、いわば最後の砦だ。この砦を守り、力を発揮していくためには技術者をきちんと評価する仕組みが必要だ」と狙いを話す。
スキル標準では、技術者の持つスキルを「スキルフレームワーク」と「職種モデル」によって評価する。スキルフレームワークは組み込みソフト開発に必要なスキルを体系化したもので、たとえば開発技術には要求分析、システム設計、実装、テストなどがあげられている。職種モデルは各職種がどのスキルを必要としているかを定義したもので、アーキテクトなら要求分析や再利用設計といったスキルが求められる。
スキル標準では職種モデルを参考に、それぞれの職種のスキルごとにレベルを評価する。評価は4段階で、
ただし、スキルレベルの計測は各人の実績をもとに行われ、評価される。つまり、それぞれの技術を実際に使った経験がないと、スキルを獲得したとは評価されないというわけだ。例えば、設計手法にUMLを知っていても、実際にUMLを利用した設計の経験がない場合、スキル標準が期待するスキルレベルには達していないという評価になる。
大原氏はスキル標準の活用法について、「技術者のキャリア育成やスキルアップのほか、企業がプロジェクトに人を配置する際の参考にしてほしい」と呼びかけた。
今後は、IPA内に10月に設立される予定のソフトウェア・エンジニアリング・センターにおいて策定作業が進められる予定。経済産業省は21日からパブリックコメントを募集しており、寄せられた意見を踏まえて職種区分と各職種のスキル評価項目を決定するという。2004年度末にスキル標準ver.1.0の公表を目指す方針だ。
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