Harald Welteというオープンソースプログラマは、自身が開発に携わったソフト「netfilter/iptables」をオランダの無線ネットワーキング製品販売企業Sitecomの製品に使用されたとして、同社を提訴している。この件に関して、Welteの弁護士は23日(現地時間)、Sitecomがこのソフトのインストール方法に関する情報の一部を公表すれば、同社は困難な訴訟から解放されると述べた。
今年4月、3人の判事で構成される陪審団がHarald Welteを勝訴とする予備判決を言い渡した。法律の専門家によると、この訴訟は広く利用されているオープンソースライセンスGPL(GNU General Public License)が適用された初のケースだという。
GPLは、Linuxをはじめ、広く利用されている数多くのオープンソースプログラムの法的・思想的な基盤となっている。このライセンスの強みが、IBMとの訴訟でLinuxがUnixの知的財産権を侵害していると主張するSCO Groupにとって、ひとつの泣き所となっている。
今回問題となっているNetfilterにもGPLが適用されるが、Sitecomは声明の中で、現在同社はGPLを遵守していると述べている。これに対し、ドイツのJaschinski Biere Brexl法律事務所に所属するWelte側の弁護士Till Jaegerは、Sitecomはさらにもう一歩踏み出す必要があると考えている。
GPLは、同ライセンスが適用されるソフトを実行可能な状態で配布している企業に対し、そのプログラムの基礎をなすソースコードの公開を義務付けている。SitecomはGPLを遵守すべく、今回問題となっているワイヤレスルータ製品「WL-122」のソースコードを含む64Mバイトのパッケージファイルをダウンロード可能にしている。
しかし弁護士のJaegerはインタビューの中で、Sitecomは必要なソフトを全て発表したわけではないと指摘した。具体的には、Sitecomは製品をインストールする際に必要なスクリプトと呼ばれるプログラム命令を発表していない。Sitecomはスクリプトを発表してはじめてGPLを遵守したことになるとJaegerは言う。
GPLが適用されるソフトを実行可能な状態で搭載した製品を販売する企業は、同ソフトの「完全なソースコード」を公開しなければならない。「実行可能なソフトについて、完全なソースコードとは、同ソフトに含まれる全てのモジュール、関連する全てのインターフェース定義ファイル、同ソフトのコンパイルおよびインストールの制御に使用されるスクリプトの全てのソースコードを意味する」とGPLには記されている。
Sitecomは今週はじめに、同社はすでにGPLを遵守していると考えていると述べたが、それ以上のコメントは差し控えた。
Sitecomがダウンロード用に提供しているあるファイルをみると、WP-122が使用するソフトウェアは、uClinuxと統合されているnetfilterだけではないという。uClinuxは電子機器向けのいわゆる「組み込み型」Linuxの一種で、本家Linuxと同様にGPLが適用される。また、WP-122に組み込まれているnetfilter以外のGPL適用ソフトには、IPアドレスの割り当て、管理用コマンドの処理、IPアドレスの変換、WP-122のPCIサブシステムとの通信、ブロードバンドネットワークとホームネットワークとの接続などのタスクを受け持つものがある。
Jaegerは、22日にSitecom側の弁護団から予備判決に対し異議を申し立てるという内容の書簡を受け取ったと述べた。具体的には、GPL違反容疑はドイツにあるSitecomの子会社ではなく、オランダの本社との関連で取り上げられるべきだ、と同弁護団は主張している。
後々に法廷審問の対象となるこの異議申し立てではGPLが問題として取り上げられていないとJaegerは指摘した。またSitecom側の弁護団は書簡の中で、全体的な問題に対処するために裁判の延期を求めた。
裁判所の予備差し止め命令によると、SitecomがGPLを遵守しなかった場合、1つ製品を出荷するごとに5〜25万ユーロの罰金が課される可能性があるという。
今回の訴訟を複雑にしている1つの要因は、Sitecomの製品に他社の技術が使われている可能性があるとJaegerが考えている点にある。Jaegerは、「同ソフトを開発したのはSitecom自身ではなく、台湾あるいは米国のチップメーカーと思われる」と述べ、さらに「われわれはドイツの企業および流通業者に対し、(同ソフトを開発した)メーカーに圧力をかけるよう要求している」と語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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