ニューヨーク発--IBMが、Linuxの開発手法に倣って、Powerプロセッサの設計プロセスのオープンにすると提案している。
IBMの幹部は、米国時間3月31日にニューヨークのマンハッタンで行われたイベントで、同社ではPowerPCやPowerサーバチップのアーキテクチャに関して、今後より多くの情報を各デバイスメーカーやソフトウェア開発者に提供していく計画があると語った。同社はまた、メーカー各社が自社のマシンにチップを搭載したり、パートナー各社がPowerプロセッサベースのチップを自社デバイス用にカスタマイズするのに役立つ、新しいソフトウェア設計ツールの配付も行う。
IBMのNick Donofrio(技術/製造担当シニア・バイスプレジデント)は、「コラボレーションによって技術革新が加速され、Powerチップが全く新しい時代を迎えるお膳立てが、これで整うことになる。我々は、プロプライエタリなマイクロプロセッサのアーキテクチャが課す制約から、電子機器メーカーを解き放つことになる」と語った。
IBMの今後の開発作業は、大規模な開発者のコミュニティが管理するLinuxオペレーティングシステムの開発プロセスからヒントを得たものになるが、しかし命令セットなど、Powerアーキテクチャの最も重要な部分については、今後もその多くをIBMが管理していくと、Donofrioは説明した。
プロセッサの設計は1社ですべてを行うのが一般的だ。IBMのような企業は、自社で設計・製造したチップをデバイスメーカーに供給し、メーカー側ではこれらのチップをそれぞれの製品に組み込むというやり方がとられている。なお、ソフトウェア開発者や顧客は通常は「カヤの外」に置かれたままで、チップの設計にはほとんど口を差し挟めない。
だが、英国のケンブリッジに本社を置くチップ設計会社のARMなどでは、自社製チップ用にソフトウェアツールを開発し、また携帯電話メーカーなどが同社の設計したチップを製品にうまく組み込めるよう支援しており、各社間のコラボレーションも非常に活発に行われてきている。
IBMでは、Powerプロセッサの開発にこうしたアプローチをもっと採り入れることで、チップの技術が進むにつれて開発体制も強化され、さらに市場における同社の立場も向上すると考えている。この取り組みには、ソフトウェアの開発、プロセッサの設計、そして未来の家電機器から既存のスーパーコンピュータまでの、Powerプロセッサを採用する各種ハードウェアの設計などが含まれることになる。
IBMは最近Powerチップの品揃え強化に取り組んでいるが、今回発表された計画は、この取り組みをさらに発展させたものといえる。たとえば、同社は顧客向けにチップを製造する委託生産プログラムを開始したり、PowerアーキテクチャのひとつであるPowerPCのプロセッサコアを、これまでより多くの企業に対してライセンス提供するようになっている。
もともと「Performance Optimization with Enhanced RISC」の頭文字をとって命名されたIBMのPowerチップは、各種のサーバやApple Computerのマシン、さらには任天堂のゲームキューブといった製品に搭載されていることでよく知られている。だが、実はもっとさまざま機器で採用が進んでおり、そのなかにはCisco Systemsのネットワーク機器などもある。
IBMは、数多くの提携先の力を借りて、新しい開発の取り組みを進める計画だとしている。今回のイベント参加者のなかには、チップや技術に関して長年IBMとパートナーの関係にあるChartered Semiconductor Manufacturingや、Wind RiverやRed HatといったOS ソフト開発各社の姿もあった。
またこの日、ソニーが自社のシステムオンチップ(system-on-chip: SOC)プロセッサに Powerチップのアーキテクチャを採用し、これを利用するためのライセンス契約を結んだと発表した。SOCプロセッサは、家電製品を動かすのに必要な多くの機能を盛り込んだ一体型のチップ。ソニーはまた、これまでIBMと協力して、Cellチップの開発を進めてきている。家電機器用に設計されたこのチップは、次期プレイステーションに搭載されると見られている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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