Javaブランドの技術を管理するSun Microsystemsは、影響力を増しつつあるオープンソースプロジェクトEclipseの参加企業に書簡を送付し、Javaベースの開発ツール市場の統合を呼びかけた。
Sunは米国時間1月29日の午後に、この書簡を送付したが、これはEclipse が独立したオープンソースプロジェクトとして活動するために、同プロジェクトを創設したIBMからの独立に乗り出すわずか数日前の出来事だった。また同社は、Eclipseへの参加が、同社製品の基礎を形成する自社のオープンソースJavaツール構想、NetBeansの断念を意味することから、すでにEclipseプロジェクトへの不参加を表明していたが、今回その決定を再発表した。
Eclipseプロジェクトは、プロジェクト名と同じEclipseという名のJava開発ツールプラットフォームを管理している。このプラットフォームを利用することにより、開発者は異なるタイプのツールを1つのプログラミングアプリケーション内で組み合わせることができる。NetBeansもEclipseとほぼ同じ機能を持つが、Eclipseほど多くの支持を業界から得ていない。
予定されるIBMからの独立は、Eclipseプロジェクトにとって重要な節目といえる。2001年末の発足以来、参加企業はおよそ50社まで増え、Javaプログラマーから幅広い支持を得てきた。同プロジェクトの独立に伴い、これまでIBMが独占していた同プロジェクトの理事会にほかのソフトウェア企業数社が加わるため、IBMがEclipse技術の開発およびJava業界全体に及ぼす影響力は弱まる可能性がある。
Sunは29日、Eclipseプロジェクトのステータスが変わっても、いくつかの問題に関して、IBMに権力が集中したり、あるいはJava業界全体ではなく、一部企業のビジネス上の利害の強化に寄与する可能性があると警告した。
IBM、Sun、OracleといったJavaソフトメーカーは完全なライバル関係にあるものの、JavaソフトとJavaツールが確実に連携できるようにするための取り組みを互いに協力して進めてきた。異なるメーカーのJava製品/アプリケーションを共有可能にし、しかも全ての製品を異なるOS上で使用可能にすれば、MicrosoftのWindowsを中心とするソフトウェア製品群に対抗する上で、1つ重要なセールスポイントとなる。
Sunは書簡の中で「最大の目標は、ある1つのプラットフォームのみに拘束しないJava技術を開発することにある」と述べ、さらに「我々は互いに協力し、Javaプラットフォームを、ツールのためのより高品質で幅広い土台にする必要がある。それこそ真の重要課題だ」と主張した。
Sunはとりわけ、Eclipseの新しい会則が、現在IBMからの出向者が務めている事務局長のポジションに「並外れた権力」を認め、同グループで進める開発の方向性や内容を裁量できる点について、警告を発した。同社はまた、IBMの従業員が今後もEclipseのスタッフの大多数を占めるかどうかについて問い掛けを行った。
さらに、SunはEclipseに対し、同グループの参加者以外からも知的財産を受け入れるよう促している。
「Eclipseは、技術の開発だけでなく、各参加企業のビジネス上の利害にも敏感に対応できるのだろうか」(Sun)
協力という切り札は?
これに対して、Eclipseの会長を務めるSkip McGaugheyは、「そうした懸念の払拭に取り組むよう、業界からも大きな声が上がっている」ことを認めた。
同氏は、NetBeansやJava Tools Communityと、さらに緊密に連携していくかどうかは、2日(米国時間)に発表予定のEcpliseの新しい役員が決めるだろうと述べた。Java Tools Communityは、競合するJava開発ツールの間で相互運用性を実現するために、Sunも参加して結成されたグループだ。
Eclipseに参加することは、Sunにとって必ずしもNetBeansを断念することにはならないとMcGaugheyは述べ、役員会に人を送り込む代わりに、たとえば今後1年以内にEclipseのソフトウェア用にプラグインを開発するというような形で参加することも可能だと指摘した。
Sunは書簡のなかで、NewBeansとEclipseそれぞれのソフトの間にある、数多くの技術的な違いについても言及している。両グループの間にある摩擦のほとんどは、技術的な課題ではなく、むしろビジネス上の課題から発生したものだというのが、Sunの全体としての主張だ。
IBMとEclipseは、正式なJava標準とは異なる設計を後押ししているが、この設計では、さまざまなオペレーティングシステムごとに異なる表示能力を利用したグラフィカルなユーザーインターフェイスソフトをつくれるようになっている。これに対し、Sunのアプローチは、オペレーティングシステムの種類に関係なく、共通のルック&フィールをつくり出すというものだ。
しかしSunは、相互運用性を持つシステムを見つけるべく、すでに作業に取り組んでいると述べている。このシステムは、さまざまなJavaアプリケーション間で互換性を欠くことがないようにするものだという。一方Eclipse側でも、両者のアプローチを橋渡しするシステムを見つけるプロジェクトが進んでいる。
さらにSunは、Eclipseへの書簡のなかで、Java開発ツールのプラグインの問題についても、立場を明確にした。
Sunや他のツールベンダーは、開発ツール用のプラグインが、IBMの好むEclipseのアプローチと共存できるよう確実を期したいと考えているため、この問題は重要だ。大手のJava企業およびMicrosoftは、開発者に対する自社製品の魅力を高めるために、それぞれプラグインの開発を奨励している。
Eclipseのソフトウェアは、さまざまな種類のプログラミングツールが追加できる単一の「フレームワーク」をつくり出し、開発者があるアプリケーションを、いろいろなベンダーのツールと組み合わせて使えるようにしている。SunのNetBeansや、BorlandやBEA Systemsなど他のJavaソフトウェア企業から出ている製品も、各々プラグインを開発するための同様のシステムを提供しているが、ただしEcliseのものとは互換性がない。
業界全体に向けたプラグイン用の統一フレームワークをつくる話は、「関与する関係者の顔ぶれを考慮すると、そもそも見込みがない」とSunは述べている。
相互運用性の問題を前進させるために、SunはEclipseに対して、Java Tools CommunityやJava Community Processという公式のJava標準化フォーラムに参加するよう呼びかけている。
「"相互運用性"という言葉が何を意味するのかを自分の都合で定義してはならない。それよりも、実際に相互運用性を実現するために業界の他の主要プレーヤーと協力していくべきだ。メンバー自らが働きかけて、EclipseをJava技術の統合勢力にしていかなくてはならない」と、Sunは書簡のなかでEclipseの参加メンバーに対して語っている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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