インテル、Prescottチップで目指すはリビングルーム進出

Michael Kanellos(CNET News.com)2004年01月28日 12時50分

 Intelは来月にデスクトップ用新チップをリリースし、リビングルームへコンピュータを進出させる本格的な計画を開始する。

 Prescottの開発コード名を持つPentium 4プロセッサの拡張版は、2月2日(米国時間)に登場する予定だが、Intelはこのチップで、コンピュータを従来のデスクトップ機よりも、むしろビデオレコーダーに似た機能を果たすものに変え、PCとテレビの間にあるギャップを埋めようとしている。

 Prescott自体は、マルチメディア用途を念頭において設計されており、ビデオやオーディオファイル処理のための新しい命令や、1MBという大容量のキャッシュを備えている。チップのスピードは、発売当初は3.4GHzだが、年内には4GHzに達する予定だ。第2四半期に予定されているWindows XPのアップデート版がリリースされると、このチップに組み込まれた攻撃を阻止するためのセキュリティ機能も利用可能になる。

 Grantsdaleというコード名のチップセット製品が、今年春に登場してくると、Prescottのエンターテイメント指向は一層強まりそうだ。このチップセットには、次世代オーディオ規格、High Definition Audioが採用され、またPCが家電機器向けのワイヤレス接続用ハブの機能もこなすようになる。

 「PrescottとGrantsdaleの組み合わせで、プラットフォームの能力が劇的な飛躍を遂げ、グラフィックやオーディオの性能が向上する。これに置き換えられる家電製品と比較すれば、価格面に限らず、非常に魅力的だ」と、IntelのDesktop Platforms Groupバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Louis Burnsは述べている。

 チップの製造工程が進歩したことで、Prescottの設計を採用したプロセッサは、これまでのものよりも急速に、さまざまな価格帯のパソコンに普及するとみられており、ライバルのAdvanced Micro Devices(AMD)にプレッシャーをかけることになるだろう。

 こうした進歩が見られるものの、Prescottでは、Intelが直面する2つのハードル--つまり、消費電力の多さと64ビット対応という課題は解決されそうにない。同社初の90ナノメートルプロセスで製造されるPrescottは、稼動時で90〜100ワット近く、アイドル時でも漏電や不慮の電力消費により40ワット前後の電力を消費する、とInsight 64のアナリストNathan Brookwoodは述べている。ちなみに、ノートPC用チップのなかには、消費電力が最大でも40ワット以下というものもある。

 電力消費の問題は、やがて性能向上の限界をもたらすことになるだろう。通常は、チップのサイズが小さくなるほど、消費電力も少なくなる。

 「チップのサイズが小さくなっても、クロック数が同じ場合、とくにメリットは得られない。また、Prescottの発熱量は、皆が予想しているよりも若干だが多い」(Brookwood)

 この2つの課題は、Prescottではなく、その次のTejasで解決されることになるかもしれない。Tejasは、今年末に大量生産が始まる予定の、改めて設計し直したデスクトップPC向けチップだ。なお、PrescottからTejasへの移行は、たとえ避けられない遅れが生じたとしても、異例の速さで行われることになる。

プレスコットの目的

 過去数年間にプロセッサの動作速度は着実に高速化しているが、コンピュータ内部にある数多くのデータパスの高速化は、プロセッサの進歩に付いてきておらず、結果として処理性能向上のネックとなっている。だが、Prescottやこれに対応するGrantsdaleのようなチップセットでは、こうした事情も一変する。

 たとえばPCI Expressは、Advanced Graphics Port (AGP) に代わって、プロセッサとグラフィックチップとを接続する役目を果たすようになる。また後には、PCIブリッジの代わりに、プロセッサをたとえばデジカメのような周辺機器に接続するようにもなる。PCI Expressは、最大8ギガバイト/秒の帯域幅を持つ。これに対して、AGP 8Xは2.1ギガバイト/秒で頭打ちとなってしまい、またデスクトップ機に採用されているPCIは一般に266メガバイトで転送速度のピークとなる。

 PCI Expressは、コンピュータの構成次第で、AGPとPCIのいづれか、もしくは両方に置き換わることができる。だが、ゆくゆくは両方のポート向けの標準となるだろう。

 その結果、PCの設計やスタイルも変わることになる。PCIでは全てのデータが並列で行き来する必要があるが、このことからエンジニアは、異なる電気コネクタ(ピンと呼ばれる)が電気的に等距離に並ぶよう、回路基盤上にくねくねと配線を這わせてこれらのピンをつながなくてはならない。ところがPCI Expressでは、並列のデータ転送は姿を消し、データはスペースを取らないケーブルを伝って転送される。そして、これがマザーボードとPC筐体の小型化を可能にする。

 シリアルATAは、PCI Experssと似たハードディスク用の接続規格だが、PrescottとGrantsdaleが普及するにつれて、これもまた2004年にはさらに一般的なものとなるだろう。

 DellのDimension製品担当ディレクター、Mark Venaは今月開催されたConsumer Electronics Show(CES)でのインタビューで、「機器の見た目がパソコンのようなら、リビングルームでは使われないだろう。今後1〜2年の間に、PCのデザインに劇的な変化が起こる」と述べていた。

 PrescottやGrantsdaleの新技術は、標準的なデスクトップ機にも導入される。その一方で、Intelが設計したセットトップボックス型のコンピュータ「EPC」は、こうしたデザイン上の変更を強く打ち出したものだ。EPCはPrescottを搭載したフル装備のWindows XPマシンで、Intel社長のPaul OtelliniがCESで発表したもの。テレビの上に設置し、音楽や録画したテレビ番組、写真やその他のメディアファイルを操作できるEPCには、キーボードではなくリモコンが付属している。

 Gatewayなどのメーカーは、IntelからEPC設計のライセンスを受けており、今年半ばに向けて、799ドル前後で製品を発売する予定だ。

 Burnsによると、IntelはEPCシステムの静音化を図るため、新しいインペラー(冷却ファンの翼)を設計し、またパソコン筐体内のパーツ配列を変更して、空気の流れをよくしたという。

 Grantsdaleチップセットには、現行の400MHz DDRメモリよりも高速でデータをやりとりできるDDR 2メモリや、High Definition Audio規格が採用されるなど、他にもいくつかの変更点がある。機能拡張したグラフィックチップを内蔵するGrantsdaleチップセットも出されるが、この画像処理性能は、現在市場に出回る技術の多くと競合できるレベルになると、Burnsは述べている。

 「異例の数のインターフェース変更が行なわれている」とMercury Researchの主任アナリスト、Dean McCarronは言う。「プラットフォーム全体をみると、明らかにプロセッサよりもインターフェースのほうに、大幅な変更が加えられている・・・通常ならば、インターフェースは1つか2つ程度しか変更されない」(McCarron)

 技術的にいうと、プロセッサ自体に加えられた変更はそれほど劇的なものではない。チップには13の新命令のほか、プロセッサが2つのタスクを同時処理できるようにするHyperThreading技術の新バージョンが盛り込まれる。こうした新機能の組み合わせにより、圧縮ビデオファイルの復元や、バックグラウンドでのウイルススキャンが容易に行なえるようになる。

生産工程も画期的に進歩

 Intelが景気低迷期に行った製造部門への投資などのおかげで、Prescottは急速に普及が進む見込みだ。Prescottは、インテルが初めて直径300mmのウエハを採用して生産するチップとなる。300mmのウエハは、200mmウエハの2倍以上の表面積を持つが、大型ウエハを採用すれば、1度に生産できるチップの個数が増えることから、大量生産によるチップの低価格化につながる。

   Prescottはまた、Intelの90ナノメートル製造工程でつくられる初めてのチップでもある。これは、Prescottのサイズが、130ナノメートルの工程でつくられたチップよりも小さくなるということだ。Prescottの表面積は112平方ミリメートルになるが、これに対して現行のPentium 4製品の表面積は140平方ミリメートルとやや大きい。

 直径300ミリメートルのウエハに、90ナノメートルの製造工程を組み合わせることで、Prescottの製造原価は(現行のPentium 4と比べて)30%程度削減できると、Intelでは見積もっている。ただしこのコスト削減の大半はすぐには実現されそうにない。

 製造効率の高さは、Prescottの価格にも反映されるだろう。ハイエンド向けの最初のモデルは、Pentium 4の時と同様、600ドルのレンジで発売になるが、Intelではすぐに価格の切り下げを行い、3.4GHz版を400ドルのレンジまで下げ、そして最上位には3.6GHz版を600ドル付近に持ってくると、情報筋は述べている。なお、チップの高速化を助けるために、いままでよりも長いパイプラインを使うよう設計に修正が加えられている。

 同社社長のOtelliniは先頃、第2四半期末までに、PrescottはIntelが高性能マシンのセグメントに向けて出荷するチップの半数を占め、また価格重視のセグメントでもかなりの部分を占めるようになると述べている。さらに、CeleronバージョンのPrescottもすぐ後に続き、一方サーババージョンのほうは第2四半期に登場予定で、このアーキテクチャをより多くの市場に普及させることになるという。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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