Linuxカーネルの2.6バージョンが、来月リリースになりそうだ。同カーネルの開発を担当するプログラマーによると、このバージョンでは、これまでのものと比べて初めから安定性が格段に増しているという。
現在のテストバージョンである2.6.0-test10は最後のテスト版になるはずで、またバージョン2.6.0も、よほどのことがない限り、今年末までには登場するだろうと、2.6バージョンの開発を監督するAndrew Mortonは、25日に行われたインタビューのなかで、そう語った。
米Red Hatや独SuSE Linuxのようなベンダが現在販売している現行の2.4バージョンと比べて、Linuxカーネルのバージョン2.6では、大規模な変更が加えられている。なかでも、数多くのプロセッサを搭載した強力なサーバの性能を活用できるのは、重要な改良点だ。なお、このサーバの市場では現在Unixが高い人気を得ており、またLinux以外にWindows Serverを擁する米Microsoftもシェア獲得を狙っている。
「2.4カーネルでは、4基から8基のCPUを搭載したサーバで限界に突き当たる。それに比べて、2.6カーネルなら、32基のCPUまで問題なくスケールするはずだ」(Morton)
Linuxの生みの親で、いまでも開発プロジェクトを率いるLinus Torvaldsは昨年、2003年6月には2.6.0を出せたらいいと発言していた。なお、2001年1月にリリースされた2.4カーネルのときも、今回と同様にスケジュールの遅れがあった。
MortonはTorvaldsの片腕ともいえる人物で、「メインテナー」(管理者)として、Linux開発のさまざまな部分に責任を負っている。Mortonが分担するのは、2.6カーネルそのものだ。TorvaldsとMortonはともに、現在OSDL(Open Source Development Labs)で働いている。この団体は業界各社が資金を出しあって運営しているコンソーシアムだ。
Mortonは、2.6.0カーネルは、2.4.0の登場時に比べ、十分にテストが重ねられてきたと考えている。「2.6.0-test10は、2.4.17と同じレベルの成熟度にあると思う」(Morton)
だが、誰もがそう考えているわけではない。SuSE技術最高責任者(CTO)のJuergen Geckは、10月に行われたインタビューのなかで、2.6ではアーキテクチャに大きな変更が加えられたことで、その分多くの問題が浮上するだろうと述べている。
一般的に新しいカーネルが登場しても、それが商品化されるまでは時間がかかる。Linux最大手のRed Hatは、カーネル2.4がリリースになった後でも、バージョンが2.4.2に上がるまで待って、これを搭載した新製品を販売した。
Red Hatは、新しいカーネルをまず同社の「Fedora Core」リリースでテストする。Fedora Core 2の主な目的は、アップグレードサイクルがよりゆっくりとした企業向けのRed Hat Enterprise Linux(RHEL)製品に2.6カーネルを搭載する前にこれを導入し、改善を加えることだ。RHELに2.6カーネルが導入されるのは、おそらく2005年になると思われる。
Red HatとSuSEは、「バックポーティング」というプロセスを通して、2.6カーネルのいくつかの機能を、製品版の2.4カーネルに移植している。これに加え、商用カーネルには他のパッチもあてられており、TorvaldsがKernel.orgに公開する標準バージョンと異なるものになっている。
カーネル2.6には、Linuxベンダー各社がこれまで加えてきたカスタマイズ要素が多く含まれているため、この新しいカーネルの登場で、これらのベンダー製品とKernel.orgに公開された標準バージョンとの差異が少なくなるだろう。Linuxプログラマは、Unixに起こったような様々な非互換バージョンへの分岐を回避するために、Linuxをひとつのものとして維持するべく努力を続けているため、この差異の減少は重要である。
これに関し、OSDL最高経営責任者(CEO)のStuart Cohenは次のように述べている。「Oracleも、PeopleSoftも、DB2もみな、同じように動作する統一されたOSに興味がある。OSがさまざまなバージョンに分かれることには興味がない。業界には、統一されたOSというイメージを保つように大きなプレッシャーがかかっている」。
2.6カーネルと次の2.7バージョンに関していえば、差異をなくすことも目標の1つだ、とMortonは付け加えた。部分的に、これは新しい機能を2.7から2.6へバックポートすることを意味する。しかし、これは多くの場合、2.6での改善点を2.7へ確実に移行し、同じ問題の修正を繰り返さなくてもいいようにすることを意味しているという。
製品版と開発版を同期させておくことは、「2.4で我々がうまくできなかったことだ」とMortonは述べた。
Torvaldsがカーネル2.6開発の責任者にMortonを指名したのは、昨年、プログラマの間でLinuxの仮想記憶サブシステムの扱い方を巡って意見が分かれたとき、Mortonがうまく意見調整を図ったからだ。
Mortonは、主要なLinuxツリーの1つを管理している。Mortonが管理しているツリーは、Linuxの標準バージョンであるLinusのツリーへのパイプ役となっている。「ここは、プログラマの取り組みが形になっていく集結地だ。私がしていることは、Linusに渡せるように時間をかけてコードを整えることだ」(Morton)
カーネル2.6バージョンには以下のような変更点が盛り込まれている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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