NTTコムウェア取締役の長野宏宣氏は10月1日、情報処理振興事業協会(IPA)が開催したオープンソースセミナーにおいて講演を行い、オープンソースが日本のIT産業に与える影響について語った。
長野氏はオープンソースが日本のIT産業に構造的な変化をもたらすと指摘する。メインフレームの時代は、ハードウェアベンダーがハードウェアからOS、アプリケーションまで全てを握っていた。「『そんな変な使い方をしたらシステムが壊れるに決まっているじゃないか』とベンダーに言われて唖然としたことがある」(長野氏)。その後、マイクロソフトの登場によりオープンシステムの時代に移り、OSベンダーとソフトベンダーが力を握るようになる。「オラクルの製品は地球を1周するうちに価格が2倍になるとまで言われた」(長野氏)
そしてオープンソースの時代、中心に来るのはユーザーだ。システムプロバイダはベンダーに縛られないため、ユーザーの望むシステムの構築が可能になると長野氏は指摘する。「システムプロバイダはベンダーに左右されることなく、顧客に提供するサービスレベルを自分で決められるようになる」(長野氏)
オープンソースではシステムの価格は下がるため、ビジネスができなくなるのではないかという声も聞かれる。しかし長野氏はこれを否定する。「システムの価格が下がっても、原価が下がるため、利益率は下がらない」(長野氏)
オープンソースを技術者育成に活用せよ
NTTコムウェア取締役の長野宏宣氏 | |
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ただしそこでは、ユーザーの期待に応えられるだけの技術力も要求される。長野氏は日本のIT産業は空洞化していると指摘。Unixなど海外からシステムを輸入することを繰り返した結果、ブラックボックス化が進んでしまったというのだ。「国内のソフトウェア業界は海外の製品動向を勉強して説明するだけ」と手厳しい。
長野氏は技術者の教育にオープンソースが活用できると期待を寄せる、コードが公開されているオープンソースであれば技術者が自由に勉強できるため、人材の育成が可能だというのだ。
実際、NTTコムウェアではLinuxを学ばせることで技術者を育てているという。NTTコムウェアがVA Linux Systemsジャパンに出資していることから、同社ではVA Linuxに毎年数人を送り込み、一緒に仕事をすることで技術を学ばせ、その技術者が社内でさらに人を育てるという方法を取っている。
「Linuxのシステムを顧客に納入する場合、Linuxベンダーに約15%の保守費用を支払っている。しかしカーネルが読めて保守ができれば、この費用が自社に落とせる」(長野氏)と語り、オープンソースを活用した技術者の育成に力を入れていくとした。
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