IDC Japanは16日、国内データベースの市場動向セミナーを開催した。これまで堅調な伸びを示してきたデータベース市場は、IT市場低迷の影響を受け2002年度にはマイナス成長となった。だがIDCでは今後も同市場の成長を見込んでいる。また、Linux環境でのデータベースはシェアが拡大するだろうとの見解も示した。
データベース市場の調査とその内容発表にあたったのは、同社ソフトウェアリサーチマネージャーの井出和之氏。同氏によると、国内データベース市場は2001年度には1000億円を超えていたが、2002年度は947億円と、6.3%縮小したことを指摘する。この原因について井出氏は、「国内全体でIT投資が減退したことに加え、特に通信業界が大きく投資を絞ったことが影響した」としている。だがこれは一時的なもので、市場は今後も年平均で約5%の成長を続け、2007年の市場規模は1070億円になると見込んでいる。
一般的にデータベースと呼ばれているのは、リレーショナル/オブジェクトリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)のこと。この分野のプラットフォーム別のシェアを金額ベースで調査したところ、「2001年から2002年の間にUnixのシェアが64.3%から58.3%まで落ちている」ことを井出氏は指摘、この傾向は今後も続くだろうとしている。一方WindowsとLinuxはシェアを伸ばしており、Windowsが32.4%から36.8%に、Linuxが1.6%から3.4%となっている。井出氏によると2007年には、Unixのシェアは半数を割って45.4%に、Windows、Linuxは堅調な伸びを示し、それぞれ41.3%および12.3%まで成長すると見ている。
ただし井出氏によると、IDCではLinux市場全体に対して保守的な見方をしているため、個人的な見解ではLinuxのシェアは同社の示す予測を上回る可能性もあるとしている。その理由として井出氏は、「欧米では現時点ですでにLinuxのシェアが15%に達している。日本でもコスト削減に対する要求が高まる中、Linuxに対する注目も高まってきた。また、信頼性と安定性も向上しているとして、日本の大手ベンダーもLinuxをサポートする企業が増えてきた」としている。
とはいえ、日本ではLinuxベースのデータベースのシェアはまだ3.4%である。このことについて井出氏は、「Linuxは“信頼性”があるといわれているが、日本の顧客に対してうまく“信頼感”がアピールできていない。これは過去の実績を重視する日本特有の感覚のためだろう」と語る。「このマインドセットさえクリアできれば、今後さらなる普及が望める」と同氏は述べた。
国内ではオラクル強し
IDC Japanソフトウェアリサーチマネージャー 井出和之氏 | |
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井出氏は、RDBMS市場のベンダー別シェア(金額ベース)についても発表した。2001年、2002年ともにトップはオラクルだ。ただしわずかながら同社のシェアは縮小しており、2001年の60.8%から2002年は53.6%となっている。これについて井出氏は、同社がNTTなど大手通信企業による投資額削減の直撃を受けたこと、また2002年2月に製品を大幅値下げしたことが原因だとしている。だが2003年5月期の決算で同社の業績は回復を見せていること、またOracle 9i RAC(Real Application Clusters)がハイエンド市場で支持を得ていることなどから、今後も安定したシェアを握るだろうとしている。
オラクル以下の国内における2002年度のシェアは、マイクロソフト(16.8%)、IBM(11.2%)、日立(6.3%)、富士通(5.2%)、サイベース(4.0%)と続いているが、ここで世界市場に目を向けてみると、オラクルの首位は変わらないものの、以下の順位はIBM、マイクロソフト、サイベースという順になっている。2001年から2002年にかけては、オラクルのシェアが41.7%から39.4%に縮小し、IBMが31.0%から33.6%、マイクロソフトが9.7%から11.1%といずれもシェアを拡大している。世界市場でのIBMのシェアはオラクルに迫る勢いだが、国内では伸び悩んでいることについて井出氏は、「DB2ブランドが日本に浸透しきっていない」と指摘する。
一方のマイクロソフトは国内でオラクルに次ぐシェアを握っているが、これは「日本におけるWindowsのシェアが非常に高いことがベースとなっている」と井出氏。また、最近では国内の財務会計システム「勘定奉行」とのバンドルを行ったり、中小企業をターゲットとしたマーケティングを行うなど、積極的な販売戦略が成功したことが順調な成長の要因だと井出氏は述べた。
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