日立のコンサルタント、J2EEシステム構築の勘所を語る

藤本京子(CNET Japan編集部)2003年06月19日 19時01分

 J2EEやウェブシステム開発に関する最新情報を提供するカンファレンス、JavaWorld DAY 2003が6月19日都内にて開催された。J2EEは柔軟性の高いシステム構築が可能だとして、ウェブシステム開発で積極的に採用されているが、どのような点に気をつけてシステムを構築すればよいのか。日立製作所ビジネスソリューション事業部ITコンサルティングセンター主任コンサルタントの尾花学氏が同カンファレンスにて講演を行い、事例を元にJ2EEでウェブシステムを構築する際の重要点を解説した。

 尾花氏は、ウェブシステムにJ2EEを適応する理由として主に3つをあげている。Java VM上でプログラムが動作するため、OSやウェブサーバなどの実行環境に依存しないこと、オブジェクト指向言語のJavaによる開発をサポートし、実行基盤やユーティリティ群が豊富なこと、そしてEJBによるコンポーネント化で再利用が可能なことだ。「J2EEを使うことでコンポーネントの開発が容易になる。これは分散システムの開発に適しており、負荷分散などのスケーラビリティへの対応にも適しているということだ」と尾花氏。

 しかしJ2EEは本当にシステム構築を容易にしているのだろうか。尾花氏は、初期のウェブシステムが単純なコンテンツ検索や参照処理が主だったのに対し、現在のウェブシステムは企業の生命線として処理も複雑になっていることを指摘し、「業務案件が複雑になってきているのにシステム構築だけが容易になるはずはない」という。

システム構築前の留意点

 そのため、まずJ2EEでシステムを構築するにあたって事前に留意しておかなくてはならないことがあるのだという。それはシステムの信頼性や性能、セキュリティを十分確保することだ。また、コンポーネントは単体で使用できないため、機能を実現するには他のコンポーネントと組み合わせなくてはならない。そこで、まずコンポーネントごとの実行条件を明確にし、実装技術やプラットフォームに依存しない概念モデルを考えなくてはならない。

 概念をモデル化するために必要なのが、アクティビティ図やコンテキスト図を使ってシステム化の対象となるビジネスプロセスを分析すること、マインドマップやユースケース図でシステム化の範囲やコンポーネント化の粒度の分析をすること、そしてクラス図、シーケンス図、コラボレーション図などで概念モデルを導き出し、論理的なコンポーネントの使用を決定することだ。「この段階ではじめて開発に着手することができる」と尾花氏はいう。

システム構築の課題に対応

日立製作所ビジネスソリューション事業部ITコンサルティングセンター主任コンサルタント、尾花学氏

 さて、実際のシステム構築にあたって問題点が出てきた場合はどう対処すればいいのだろう。尾花氏は事例に基づき、いくつかのパターンを紹介した。

 まずはオンラインショップなど大量の画像データを扱う必要がある場合、画像転送処理が大きくて検索処理や登録処理といった他の業務処理が遅れてしまうことがある。これは処理の重さと窓口の数がうまく考慮されずに構築されてしまったと考えられるが、対処法としては、アプリケーションサーバ経由で画像を取得する必要があるのかどうかを考えた上で、画像取得はHTTPサーバに任せるという方法がある。また、検索処理はアプリケーションサーバ1で、登録処理はアプリケーションサーバ2でといったように、業務の重さでサーバを分けるといった対処法もあるという。

 次に、負荷分散でセッション維持がうまくいかなくなる場合。この対処法としてシステム構築時に検討すべきことは、処理途中でブラウザを終了したり放置した場合のことを考えてセッションの開始・終了契機を考えること、負荷分散のルールを明確にすること、Coockeの使用目的や設定・参照契機を整理することなどである。

 また、SSL対応システムでSSLが解除されてしまうような場合。尾花氏は「セキュリティポリシーをどこに置くか明確にされていないため起こる問題だ」と警告するが、これを避けるためにはシステム構築時にSSLを必要とする業務範囲を明確にすること、サーバ増設時にも定義変更項目を整理すること、SSL処理によるオーバーヘッドを見積もることなどが必要だとしている。

 「J2EEシステムとはコンポーネントの集合体なのだ。構築するシステムに求められている用件を分析・整理し、コンポーネントに求められる柔軟性や機能の粒度を決めなくてはいけない。そして必要性を明確にし、“J2EEがそこにあるから使う”のではなく、“J2EEが必要だから使う”ようにしなくてはいけない」と尾花氏は語った。

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